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次世代個人向けPCやTouchSmartも

話題のwebOS搭載機、HPが上海でデモ

2011年02月24日 10時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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 米ヒューレット・パッカードは23日、中国・上海で同社が今後市場投入するパソコン関連製品を一斉公開するプレスイベント「A New HP World」を開催した。

 目玉となった製品は、webOS搭載のタブレット「HP TouchPad」、同じくスマートフォンの「HP Veer」「HP Pre3」。ほかに音楽の再生品質を改善する「Beats Audio」を搭載したノートパソコン群、次世代「TouchSmart PC」など。いずれも9日(現地時間)に、米国で発表済みで、webOS搭載機については、先週スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2011」でも展示されていた(関連記事)。

コンパクトなwebOS対応機Veer

 今回は中国・インド・シンガポール・インドネシア・日本などアジア太平洋地域の記者に対して、同社の新製品を披露するのが主目的。とはいえ、製品担当者と直接話す機会も用意され、その言葉から同社が今後進んでいく方向感を知ることができた。

ファッションとパッション

 現地時間の23日午前に開催された基調講演では、ファッション(デザイン性)とパッション(顧客の心に響くこと)の重視、そして子供から老人まで誰もが使え、デジタルデバイドを作らない「シンプルな使い勝手」など、製品開発の指針となるコンセプトが提示された。

タブレット型のTouchPad

 またモバイルの分野では、1人のユーザーが複数の機器を所有するのが当たり前となり、人々はこれらをシチュエーションに応じて持ち替えて利用している。そこで重要となってくるのは、端末を替えても同じデータにアクセスでき、作業をシームレスに継続できることである。webOSに搭載された「Synergy」は、クラウドなどを介してその機能を実現する。

 webOSは、昨年12億ドルで買収したpalmの技術をHPが継承したものだ。現在はARM系プロセッサー(最新機種ではSnapdragon-1.4GHz)上で動作している。ウェブブラウザーは、iPhone(Safari)などと同じWebKitをベースとしたものだが、HTML5のサポートをいち早く表明しており、Flashにも対応する。マルチタスク対応で、VPNやActive Directroyと連動したExchangeサーバーのポリシー管理など企業向け機能のサポートも充実。開発者向けのSDKも用意されている。

 スマートフォン/タブレット向けのOSは、Linuxをベースとし、フラッシュメモリーに収められた状態で提供しているが、今後は一般的なパソコンで動作するバージョンも用意する予定。同社CTOのPhil McKinney氏によると、Windows 7上で動作するエクステンション(≓アプリケーション)という形で提供する。

Phil McKinney氏。FOSSILと共同開発した腕時計も披露

 そのためインターネット接続が可能なパソコンを安価に提供することを意図した、グーグルの「Chrome OS」のように直接Windowsと競合するものではないとする。プロジェクトそのものが極秘に進められてきた経緯もあり、実装方法などには不明な部分も多いが、世界No.1の出荷台数を持つ、HPのPCに搭載することで、早期の普及を目指す。また、今のところ機能改善に主眼を置いており、他社にライセンス提供する方向性は考えていないという。

豊富なプロダクトファミリーを用意

Touch to Shareのデモ。置いてあるタブレットの上にスマートフォンを置くだけで、同じ画面が表示される。2台の端末で同時に振動することを検知し、Bluetoothで情報をやり取りする

 webOS関連で今回発表された3製品は、TouchPadが9.7型、Pre3が約3.6型、Veerが約2.6型を搭載する。Pre3とVeerはともにスライド式のハードキーボードを搭載。最も小さなVeerは手の中に収まるほどコンパクトだ。

 TouchStone(専用充電器)に置くだけでワイヤレス充電ができる。また、Bluetooth技術を応用したTouch to Share(端末と端末を接触させると、ブラウザーなどで表示中の情報が同じになる)など、特徴的な機能も装備している。

 Synergyに関しては、仕事から帰宅し、家でくつろぐという一日のタイムラインに沿った形で、webOSがどのように活用されるかというデモが実施された。基本的にはインターネット上(クラウド上)に置いたデータを、複数の端末から利用するというものだが、ウェブメールやSNS、カレンダーなど複数のサービスの内容が集約された画面で確認でき、ワンストップで見られる利便性の高さが強調された。

さまざまなウェブメールサービスで受信したメールを一覧できるインターフェース

 マルチタスクに対応したwebOSでは、カード(ウィンドウ)ごとにアプリケーションが管理され、ワークスペースボタンを押すことで使用中のカードの一覧が見られる。関連したカードはドラッグ&ドラッグでスタックし、まとめて管理できるほか、利用しないものは上にスワイプすることで簡単に片付けられる。したがって、メールを書いている途中で、サイトやローカルに保存した情報を参照してまたメールに戻るといった普段パソコンで実行しているような処理がそのまま実行できる。また、思いついたらまず入力し、その後で貼り付けるアプリを選ぶ、入力メソッド「JustType」も面白い。

カードの一覧。タッチ操作で順送りができる。スタックも可能

 グーグルやマイクロソフト、ヤフー、フェイスブック、リンクドインなど、対応するウェブメール、SNSは豊富。IMに関しては通知領域にプッシュされる。TouchPadのソフトキーボードは数字キーなども備えており、キーサイズの変更も可能。iPhoneのように日本語・ローマ字・英数字といちいち切り替えながら入力する手間も必要なさそうだ。

ソフトキーボード。数字のキーも用意されている

 現在提供されているwebOSのバージョンはスマートフォン向けが2.x(最新版は2.1)となるが、次世代の3.0もTouchPadを皮切りに順次投入する。SDKによって、OpenGLを活用した3Dアプリの開発も容易になるそうで、4日間で作成されたというOpenGL仕様の3Dゲームも紹介された。

高音質化技術や冷却など、ユーザビリティーに配慮

Beats Audio搭載のdvシリーズ

 一方、個人向けのパソコンに関しては、高音質再生技術の「Beats Audio」、加速度センサーで取得した情報から利用状況を把握し、最適なファンコントロールやCPU負荷の調整をする「HP Cool Sense」、複数のパスワードを集約し、指紋認識によって利用できる「HP Simple Pass」、ハイビジョン対応のウェブカメラ「HP TrueVision HD Webcam」といった機能を今後のラインアップで提供する。

 Beats AudioはDr. Dreとの共同開発によるものでVoodooシリーズではすでに搭載済み。今回対応したdvシリーズではイコライジングなどソフトウェア技術に加え、ヘッドホン端子の設計をイチから見直すなどハードウェア的なアプローチも実施。

 例えば周辺の金属部品から入るグランドノイズを部材の吟味によって防いだり、内蔵4チャンネルスピーカーの採用(dv6とdv7の一部機種)、オーディオモジュールのディスクリート化といった取り組みも実施している。

Beats Audioの高音質ヘッドホン。ヘッドホンジャックの設計にもこだわりを見せた

 CoolSenseに関しては、本体の動きによってモバイルでの使用かデスクトップでの使用かを判別し、CPUクロックの調整するほか、ひざの上で使う際には、底面の温度を下げる設定に移行するなど、温度や付加といった単純な数値だけでなく、利用シーンも考慮した冷却レベルの設定を選べる点が特徴となる。

 また、スペック面では第2世代Core iシリーズ(Sandy Bridge)やGDDR5対応のグラフィックスチップの搭載機種をさらに拡充するほか、デザインにもこだわりを見せる。

エントリー向けのGシリーズには豊富なカラー天板を用意している

 会場ではこれらを採用したPavilion dv5/6/7シリーズ、およびTouchSmart PCが展示されていた。またエントリー向けのPavilion Gシリーズではこれまでにない規模での多色展開も実施。dvシリーズではアンバー調のメタリック仕上げで、天板に細かなパターンをあしらった高品位な仕上げ。一体型のTouchSmart PCでは、ヒンジ機構の改善で最大60度に深く傾斜させ、上から見下ろすような形での利用が可能になったほか、内蔵アプリ「TouchSmart ソフトウェア」のバージョンアップも実施されている。

TouchSmart PCは画面を大きく倒して、上から見下ろすような形で利用できる

 国内での価格および投入時期に関しては未定で、準備が整い次第、正式発表される予定だ。


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