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クリプトン、CD録音をハイレゾ化した新フォーマット「HQM GREEN」発表

2011年02月18日 23時00分更新

文● TECH.ASCII.jp編集部

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HQM GREENのロゴ

 クリプトンは15日、CD品質の16bit/44/1kHzでデジタル録音された音源を、最大24bit/176.4kHzに高音質化して提供する新シリーズ「HQM GREEN」をリリースした。FLAC形式で提供し、配信は3月から。同社が展開する高音質音楽データ配信サイト「HQM STORE」で販売する。

 初回リリースには、カメラータ・トウキョウ提供のクラシック作品10タイトルを予定。HQM STOREではすでに最大24bit/192kHz収録のFLACデータが配信されているが、これに今回のHQM GREENを加え、2011年度末までに200タイトルを揃える予定だ。


CDの音はそもそも歪んでいる?

 HQM GREENの狙いは、1980~90年代にデジタル収録された名演奏をより高音質に聴かせること。

 その開発は、クリプトンの桑岡俊治氏が担当した。桑岡氏は、日本ビクターでK2プロセッシング技術を手掛けた人物。K2で培った技術をベースにしながら、同氏の経験に基づく調整が加えられており、より原音に近い波形が得られる点をウリにしている。

 リニアPCMでは入力した信号の大きさを一定の間隔で計測し、数値化する。入力信号の大きさを何段階で示すかは量子化ビット数、それを1秒間に何回の頻度で繰り返すかはサンプリング周波数で決まる。CDを例にとると、1秒間に4万4100回、216≒6万5000段階の精度でデータを数値化していく形になる。

 ただしこれは、あくまでも点と点の集まり(数学的な表現では離散的)なので、アナログ信号のように点と点の間に無数に存在するなめらかな線として情報は残せない。

 ちなみに44.1kHzという数字は、人間の可聴域(20kHz)より一割多い22kHzまでの情報を記録するために定められたとされる。ある周波数の正弦波を完全に復元するためには、倍のサンプリング周波数があればいいという理屈(ナイキスト定理)に基づいたものだ。一方で折り返しノイズを防止するために、それ以上の周波数の音はバッサリと捨てている。

 また、22kHzまでの正弦波を復元できると言っても、それは正弦波のみであり、例えば(方形波のような人工的な波形など)それと異なる波形は歪んだ形でしか復元できない。人間の耳がそれを判別できるかどうかは別として、CDでは可聴域でも波形に歪みが生じる可能性がある。

 一方16bitという数字は、記録密度などCDというメディアの制約もあったのだろうが、それが24bit(≒1678万段階)に増えれば振幅の細かな違いをより正確に表現できるようになる。記録できる最小音と最大音の差(ダイナミックレンジ)はCDの場合96dBだが、24bitになると120dB。これは特に利用するステップ数の少ない微小音の表現(量子化歪みの少なさ)に影響が出る。

 しかし、上の述べたように離散的な情報の集まりであるリニアPCMの信号をハイビット/ハイサンプリングのデータに変換するのは中々難しい問題だ。点と点を補えば確かに情報量は増えるが、実際には、あるポイントとその次のポイントが右上がりに増えていることが分かっても、ほぼ直線的なのか、あるいは最初は緩やかに始まり、終わりが急激に上がっているのかどうかまで分からなければ、元の正確な波形に近付けることはできない。つまりある点とある点の間の平均値を取るなど、単なる補完では情報量は増えても、原音からは逆に離れてしまう危険性もあるのだ。


HQM GREENとは何か

 それではHQM GREENはどのように信号を補うのだろうか。まず16bit±0.5LSB(LSBは最小ステップ、つまり1/6万5000段階の範囲)に収まる滑らかな線としてつなぎ、それを24bitのデータとしてサンプリングし直す。

 その上で元のデータと音楽エネルギーが等価(波形を積分した面積が同じ)になるよう調整する。基本的な考え方はK2テクノロジーと同じだが、滑らかな線を作成する際の係数の置き方などに桑岡氏独自のノウハウが反映されているという。

 また高域の補完に関しても効果が出る。楽器や人の声には倍音(多次高調波)と呼ばれる成分が含まれているが、その含まれ方の違いが音色を決めている。HQM GREENでは、低い周波数帯の波形を分析し、その類推で失われた倍音を補う。高域補完をうたう技術の中には、ノコギリ波などを適当に減衰させながら付加しただけというケースもあるが、ここでもより現実の音に近付かせるためにどうするかに取り組んでいる。

 こういった取り組みが功を奏したのか、HQM GREENは録音エンジニアや演奏家にも好評だという。カメラータ・トウキョウの中野浩明社長によると、同社のプロデューサー井阪紘氏も「意図した録音を、より実際の音に近い形で皆様にお伝えできるのは大変嬉しく思う」とコメントしているという。

 今回クリプトンラボで、HQM GREENとCD品質のデータの比較試聴する機会があった。楽曲は1990年に作曲者の故郷リンツで収録された、ブルックナー交響曲第7番ホ長調 [ノヴァーク版](クルト・アイヒホルン指揮リンツ・ブルックナー管弦楽団:HQMG-20002)。編成の大きなオーケストラによる、陰影に富んだ楽曲。

試聴楽曲の型番に誤りがあったため修正しました。(2月22日)

 聴き比べると、三次元的な奥行きや音場の広さに確かな違いが出てくる。微小音からfffまでダイナミックレンジのフルオーケストラの演奏では、微小な信号も的確に再現されるため、音全体にベールを一枚剥いだような印象がある。例えば第一楽章、小さく流れるティンパニーのトレモロの表現は分離がよく明晰。金管楽器がとどろく第4楽章終盤では、スケールが大きく広い音場に緻密に描き分けられた個々の楽器の描き分けが絶妙であった。

 HQM STOREでは24bit/88.2kHzと24bit/176.4kHzの二種類のHQM GREEN音源を提供する予定。価格は88.2kHz・60分で2310円程度。176.4kHzではその1割増し程度を想定。楽曲にはフォーマット説明の末尾に「GR」の文字を追加して、ほかの音源と区別する。

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