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Mobile World Congress 2011 レポート 第6回

デュアルからクアッドへ 急速に成長するARMプロセッサ

2011年02月18日 21時00分更新

文● 塩田紳二

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今年のトレンドはマルチコア化
クアッドコア搭載のスマートフォンも出てくる?

 またマルチコア化については、MPcoreと呼ばれる技術が同じくARM社から提供されている。Cortex-A9を採用するSoCプロセッサでは、マルチコアを用意するところがほとんどだ。マルチコアは消費電力の点でも有利な部分がある。

 たとえば携帯電話では、高負荷の処理を長時間行なうことは製品の性格を考えると許容されない。一方でもちろん必要な処理はあり、最悪の場合を想定して最大性能を決めねばならない。しかしマルチコアとすることで、複数タスクの同時実行による負荷を分散でき、シングルコアよりもクロック周波数を低くできる。消費電力はクロック周波数に関連するため、結果的に消費電力を下げることも可能になるわけだ。もちろん、スマートフォンでも複数タスクが動作するので、コアが複数あれば単位時間あたりの処理性能を上げることもできる。

 次世代プロセッサーとしては、A9のクアッドコア化(Cortex-A9 MPcoreは最大4コアまでをサポート)や次世代コアであるCortex-A15などの方向がある。また、独自パイプラインを採用するクアルコムやMarvell(インテルからXscale部門を買収)なども高性能化を狙う。

 Texas Instruments(TI)社は、すでにCortex-A15を採用するOMAP5を発表している。Cortex-A15は最大クロック周波数は2.5GHz、DMIPS/MHzは、Cortex-A9の2倍と言われている。ただし、出荷に関しては2012年以後となる。なおCortex-A15はTIとサムスン電子、ST Ericssonに最初はライセンスされるという。

TIが開発中のOMAP5。Cortex-A15と周辺回路を統合。スマートフォンやタブレットでの採用を狙う。Cortex-A15は現在ARM社で開発が進められている段階

 一方独自コアを持つのはクアルコムとMarvellである。クアルコムの現行製品であるSnapdragonには、前述したようにScorpionと呼ばれるコアが使われているが、次世代Sanpdragonではコアを刷新。コードネームで「Krait」と呼ばれるこのコアは、最大2.5GHz動作を可能にし、コアあたりの実行性能は150%増えるという。

 今回のMWCではNVIDIAが会場で現在の「Tegra 2」の後継となるクアッドコアプロセッサの展示を行なった。「Tegra 3」という名称になると見られるこの新プロセッサーは、Cortex-A9プロセッサを4つ搭載し、自社製のGPUを搭載する。NVIDIAによれば、現在のTegra 2の5倍の性能があるという。Tegra 2はCortex-A9のデュアルコアなので、この“5倍”という数字にはGPU部分の強化も含まれているようだ。

 次世代ARMプロセッサーは、同じようなプロセッサー同士の競争でもあり、同じ命令を実行する違う実装の競争でもある。スマートフォン分野の競争が激しくなるにつれて、ARMプロセッサーの性能は短期間で向上しそうだ。

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