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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 第14回

恐怖ですぞ~!その「世間様」とは何でござるか!

これがオタクの生きる道!「海月姫」監督に聞く【前編】

2011年02月19日 12時00分更新

文● 渡辺由美子(@watanabe_yumiko

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オタクの描き方が「動物園」になることを恐れた

大森 アニメにする際に、一番恐れていたのが「動物園になっちゃまずい」というところだったんですね。要するに「見る側が理解できない、変わったものの生態を面白おかしく描く」ではいけない。視聴者の共感が得られないものになってしまう。そうなっちゃまずいよね、じゃあ、どうしたらいいんだろうと。

―― 動物園……オタクの生態が見せ物になってしまうといけないということですね。一時期、「腐女子」ブームの時にたくさんの書籍が出ましたが、共感するような本が出る一方で、オタク女性を見せ物にしていると感じる不快な本も出て、この感じ方の差はどこから来るのだろうと不思議に思っていました。視聴者の中にいるであろう「当事者」が不快に思わないように、どのような形でクリアしていきましたか。

大森 そこも原作のテイストからヒントを得ました。一番最初に東村先生とお会いしたときに出たお話なんですけど、東村先生は、「本人たちは、誰かを面白がらせようと思ってやっているんじゃないんです」という話をされていて、そこがアニメの肝になりました。

 たとえば、まややはしょっちゅう三国志について語ったり、武将になりきってひとり芝居をしていますけど、現実にこういう人がいたらと考えると、ちょっと痛々しいなという気持ちになるじゃないですか。

―― ああ、そうかもしれません。

大森 その一方で、こんな人がそばにいてくれたら楽しいだろうなというのも想像できる。そう思ったとき、「まややはどういう位置でいてくれると痛くなくなるのかな」と考えると、たぶん誰かの目を意識してパフォーマンスとしてそれをやっていたら、痛く見えるんだろうなと思ったんですよ。

 「とにかくそれをしていることが一番楽しい」という表現にすることが重要なのかなと。人が聞いていようがいまいが、三国志について語っている時の自分自身が好きだ、という感じが出てくれればいい。

 そういう意味でも、キャストは登場人物にぴったりな演技ができる方に巡り合えてよかったです。僕は音響演出も兼任していたんですが、月海役の花澤香菜さんは、オーディションのときから月海のキモかわいい感じが良く出ていていいなと思いました。

 月海は主人公ということもあって、お母さんに対しての思いとかクラゲがどうして好きかなど、モノローグでも語っているし、物語の中でも心情を掘り下げられるんですね。なので、そこは少々キモい感じを出しても、痛く見られるという心配はなかった。ところがまややは、心理を表わすような描写が出てこない。行動だけで見せなきゃいけないところがありました。

―― 裏側の心理が描かれないと、「痛く」見えやすいということですか。

大森 だと思います。他の子たちは、ちょっとキモくなっても大丈夫だけど、まややはとにかくうるさいし、ちょっとハタ迷惑なところがあるじゃないですか(笑)。だからどう扱っていいかをよく考えなければならなかったんですね。

 まやや役の岡村明美さんには、面白いことをやろうとしているように見えないようにしてほしい、あまりキャラを作りすぎないで、まやや自身がすごく楽しんでいるんだということを、ナチュラルな感じで出してほしいという風にお願いして、あの絶妙なバランスができ上がったんです。

 はた迷惑なキャラではあるんだけれども、「でも、コイツがいないとさみしいよね」と思えるようになったら勝ちだなという部分がありました。

―― 本人が楽しんでいるというポジティブな面が出ていると、視聴者側も面白く見られるということでしょうか。

大森 そう思います。視聴者の方が一番共感してくれたところは、尼~ずのみんなが「楽しもう」としているところじゃないかなと思います。人生を謳歌している感じがすごくありますよね。

(次のページに続きます)

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