恐怖ですぞ~!その「世間様」とは何でござるか!
これがオタクの生きる道!「海月姫」監督に聞く【前編】
2011年02月19日 12時00分更新
コンプレックスに男女差はない
―― 相手に思いを伝えたいから語るのではなくて、理解してくれないことをうすうす分かっていて、でも言い切ってしまいたいのかもしれませんね。そうしたオタクというものを考えたときに、男性と女性ではどんな違いがあると思いましたか。
大森 根本的にはそんなに違いはないんじゃないかと思っています。
―― 個人的にオタク女子ならではと思ったのが、月海が「クラゲみたいなドレスがあったらきれいだな」と感じる反面、「こんなきれいな服は自分には着られないだろう」と、自分にツッコミを入れて勝手に気後れして、ひとりでコンプレックスを抱えてしまうところでした。
大森 あ、でもそういうところは男子も結構同じなんじゃないかなと思いますよ。
異性に対して気後れするとか、そりゃ男子もコンプレックスに思いますよ。やっぱりみんな、小学校、中学校のときから、好きな女の子に告白してもうまくいかなかったり、それ以前に、告白なんて無理だろうと思って引いてしまったりということはあるんじゃないですか。それこそ月海みたいに「私なんかがあんな格好したって」みたいなこととか、男子も一緒だと思います。
それで「俺には漫画があるから」と、シャットアウトすることもあるかもしれないし。
(C)東村アキコ・講談社/海月姫製作委員会
―― なるほど。「海月姫」でも、オシャレ人間がいっぱいいる渋谷には行けないみたいな、尼~ずの描写はたくさんありましたね。男女ともオタクのメンタリティというものは、あまり変わらないのかも。
大森 憧れが大きいものに対して、自分には手が届かないと勝手に思って線引きをしてしまうとか、他人から自分はこんな風に見えているに違いないと被害妄想を膨らませてしまうとか。オタクというのは、そうしたメンタリティが非常に面倒くさいですよね。自らも振り返ってそう思うんですけど。僕自身がそうでしたから(笑)。
―― 監督ご自身にもそういった経験が?
大森 そうですね。アニメーションを作りたいと思ったのも、アニメが好きだったからですし。でもただでさえ、アニメ以外のことに対してもいろいろコンプレックスを抱えていたりしてるのに、アニメ好きってこと自体にも何か引け目のようなものがあったり。オタクの性分というのは、わりと性別、年代を超えて同じようなところがあると思いますね。
(C)東村アキコ・講談社/海月姫製作委員会
(次のページに続きます)
この連載の記事
-
第56回
アニメ
マンガ・アニメ業界のプロがガチトークするIMART2023の見どころ教えます -
第55回
アニメ
日本アニメだけで有料会員数1200万人突破した「クランチロール」が作る未来 -
第54回
アニメ
世界のアニメファンに配信とサービスを届けたい、クランチロールの戦略 -
第53回
アニメ
『水星の魔女』を世に送り出すうえで考えたこととは?――岡本拓也P -
第52回
アニメ
今描くべきガンダムとして「呪い」をテーマに据えた理由――『水星の魔女』岡本拓也P -
第51回
アニメ
NFTはマンガファンの「推し度」や「圧」を数値化する試みである!? -
第50回
アニメ
NFTで日本の漫画を売る理由は「マンガファンとデジタル好きは重なっているから」 -
第49回
アニメ
緒方恵美さんの覚悟「完売しても200万赤字。でも続けなきゃ滅ぶ」 -
第48回
アニメ
緒方恵美さん「逃げちゃダメだ」――コロナ禍によるライブエンタメ業界の危機を語る -
第47回
トピックス
『宝石の国』のヒットは幸運だが、それは技術と訓練と人の出会いの積み重ね -
第46回
トピックス
『宝石の国』が気持ちいいのは現実より「ちょっと早回し」だから - この連載の一覧へ