なぜこの住宅地にデータセンターがあるのか?
とはいえ、なぜこの目黒の閑静な住宅地にデータセンターがあるのだろうか? 当然ながら理由がある。実は、この建物は以前、ある大学の教授が流体力学研究所として利用していた場所で、今回データセンターが設置された場所にはスーパーコンピュータが何台も設置されていたのだという。残念ながら、この研究所自体は移転してしまったが、敷地と建物を買い取った日本ラッドにより、データセンターとしてよみがえったというわけだ。こうした経緯から、電力面や耐震性などはまったく問題なく、データセンターとしての要件は満たしている。
さて、実サービス用のデータセンターは図のとおりとなっている。外部に突き出たダクトから吸気し、逆側のダクトから排気するという構成は実験時と変わらないが、ラックは全部で3列分用意された。1列の場合は吸気と排気で2分割という構造でOKだが、3列ラックが並ぶと、吸気と排気をうまく考えないと、熱の逃げ場がなくなる。また、イチからの構築ではなく、既設の建物を改築して利用するため、おのずと構造が制限される。その結果、岡田氏曰く「苦肉の策」というやや複雑なエアーフローになっているわけだ。以下、写真で見ていこう。
コスト削減時代の異端児が破る原価の壁
3階は監視センターのほか、ネットワーク機器などが格納されている部屋が用意されている。ここでのサーバールームも吸気と排気とで区画が間仕切りされた構造になっている。
スーパーコンピュータが設置されていたとはいえ、既存の建物を改造したため、なんとも手作り感が漂うデータセンターだ。もちろん、これを見て「チープ」と感じる人もいるだろう。確かに、耐震性やセキュリティに贅を尽くしたデータセンターも必要だ。しかし、今後起こるクラウド(特にインフラ部分)のコスト競争を考えれば、この「エコロジー&コモディティ」の形はありだと思う。完全外気冷却という技術面はもちろん、多くのデータセンター事業者が頭を悩ます「原価の壁」をブレイクするチャレンジとして、今後の同社の取り組みには注目していきたい。
初出時、流体力学研究所自体が閉鎖されてしまったと記述しましたが、移転して現在も活動を行なっている旨連絡をいただきましたので、お詫びして訂正させていただきます。本文は訂正済みです。(2011年6月23日)
