このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 次へ

鳥居一豊の「最新AVプロダクツ一刀両断」 第27回

マニュアルMCACCで濃密カスタマイズ

格闘系AVマニアに贈る逸品! パイオニア「SC-LX83」(後編)

2011年02月09日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

圧縮音源の音の良さにびっくり!?
「サウンドレトリバー」

 次は、圧縮音源の高音質化機能である「サウンドレトリバー」を試した。本機は、地デジのマルチチャンネル音声にも対応したので、昨年放送された「スター・ウォーズ エピソード3」の冒頭を試聴してみた。

 パッと聴くと高音域が強まった印象で、戦闘機の飛行音やレーザーが飛び交う音などのさまざまな効果音がより明瞭になり、音数も増えた印象になる。サラウンドの空間がやや広くなった印象だし、テレビドラマの主題歌などを聴くと、ボーカルの音像がくっきりとし、わずかに付加されたエコーの効果などもはっきりと再現される。

 「AACって、こんなに良い音だったんだ!」と素直に驚く。これはDVDのドルビーデジタルなどでもほぼ同様だ。ただし、当然ながらCDなどのリニアPCM音声で使うと、高域が明らかに過剰に強調されたように感じるので、BDレコを使う場合は、地デジ放送の視聴ではON、BDソフトなどの再生時はOFFと、必要に応じて切り換えるといいだろう。

 BDソフトでは、「インセプション」などを視聴したが、ダイアローグが濃密で、足音や衣擦れといった生活音はリアルそのもの。アクションシーンでの爆発音や銃撃音は恐怖を覚えるほどに実体感があるなど、みっちりと中身の詰まった音の迫力に圧倒される。

 その分、部屋を包み込むような全体的な空間の表現はどちらかと言えば背景のように目立たない。緊迫したホテルの廊下の中での攻防や、疾走する車内の閉塞感など、しっかりとシーンに合わせて設計された空間を再現している。この実力はたいしたもので、各社とも上位クラスの製品はそれぞれに個性も豊かで、実力も高いが、その中でも本機はトップクラスにあると言っていいだろう。

 最後に本機の新機能として追加されたバーチャル・フロントハイト、バーチャル・サラウンドバックについて紹介したい。本機では、フロントハイト/フロントワイド用のスピーカー端子が追加され、サラウンドバックを使った7.1chと排他使用でフロントハイト/フロントワイドの7.1ch再生が可能。

 このほかに、フロントハイト、サラウンドバックについては、バーチャル再生することもできる。この機能を組み合わせれば、サラウンドバックを使った7.1chならば、バーチャルフロントハイトを使った9.1ch再生が可能。バーチャルフロントハイト機能を使うと、フロント方向の音場の高さがかなり広がる。セリフなどの実体感のある音の定位がぼやけることもなく、音の響きや効果音だけが上方から聴こえるように感じた。

 ちなみに、パイオニアオリジナルのフロントワイドスピーカーを設置した7.1ch再生ならば、バーチャルフロントハイト/サラウンドバックを使って11.1ch再生が可能になる。

AVアンプとして一級の音の実力を持つだけでなく、映像面も強力
なによりも「格闘したい」オーディオマニアにも推薦!!

 筆者は、実はAVアンプに高画質化機能をまったく求めておらず、基本的にスルー(入力信号をそのまま出力する)で使う主義なのだが、本機に限っては「P.C.24P」機能に注目している。

 これは映画など、フィルム素材の映像での24コマ表示を忠実に行なう機能で、これ自体はほとんどのBDレコやBDプレーヤーが1080/24p出力に対応し、薄型テレビも中~大型以上のものではほとんど1080/24p対応となった現状では、目立った機能ではない。

 ただし、本機の場合は、60コマ表示に変換されて収録されることが少なくないDVDの映画や、地デジやBS放送を録画したディスクなども1080/24pに変換して出力できる。

 これができるモデルはほとんどないだろう。DVDソフトやデジタル放送の映画など、いろいろなソースで試してみたが、面白いのはビデオ撮影された普通のテレビドラマも強制的に1080/24pに変換して出力すること。

 当然ながら映像はコマ落ちが発生してギクシャクと見づらいものになるので、使わない方がいい(こんなことを試したのは、放送された映画などの映像を解析し、元が24コマ収録であることを何らかの方法で検出して、該当する限られた映像だけを変換できる機能ではない、ということを確認したかったから)。

 しかし、これができるということは、多くの場合、今も24コマで制作されているテレビアニメをそのまま24コマで表示することが可能ということだ。テレビアニメも24コマ表示ができるのはアニメを愛する筆者にはけっこう魅力(CGを多用したアニメなど、最新作ではすべてが24コマ制作ではないかもしれないが)。

 実際のところ、大きな差が見られたわけではないが、動きの速いシーンなどで目につきやすい輪郭線の乱れなどが減り、すっきりと見やすい映像になったような気もする。納品された完成映像に後から加えられたであろう「インターネットへの不正なアップロード等を注意する」テロップなどの動きは明かにギクシャクして不自然なものになるので、24コマ変換出力が行なわれているのは間違いなさそうだが、このあたりの効果の程はもうちょっとじっくり確かめたかったところだ。

 なお、本機では、1080/24p変換だけでなく、これまではアナログ入力時にしか行なえなかった入力信号のスケーリングがHDMI入力でも可能になった。

 このため、「Apple TV」や「プレイステーション 3」などのゲームに多い、720p映像もAVアンプ側で最大1080/60pに変換して出力してくれる。AVアンプ側の変換と、薄型テレビ側の変換のどちらが優秀かを確認してみるのも一興だろう。

 このように、抜群の高音質の実力はもちろんのこと、画質面もなかなか魅力的。しかも本機はプリアウト出力を備えるだけでなく、前面のスイッチ操作でパワーアンプ部への電源供給を完全にカットするモードも備えており、プリアンプとして使いたいハイエンドユーザーにも対応している。

 マルチチャンネル再生が主たる目的ではあるが、本機の自動音場補正機能を使って「スピーカーと格闘したい」AVマニア/オーディオマニアの頼もしい味方にもなってくれる。ほかにはほとんど例がなく、なかなか使いでのある楽しい機械だ。


■Amazon.co.jpで購入

■関連サイト

前へ 1 2 3 4 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中