このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

山谷剛史の「中国IT小話」 第89回

「淘宝商城」で見えてきた! 中国で売れるデジタルガジェット

2011年02月08日 12時00分更新

文● 山谷剛史

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

スマホより“かんたんケータイ”が売れた

 携帯電話はノキアが強い。スマートフォンの「Nokia 5230」が1万1231台売れた。対してApple製品は「iPhone 4」が1173台、「iPad」が2314台、「iPod touch 4G」は1890台と相対的に売れていない。

 しかしながら、iPhone用の画面保護フィルムが4860個も売れているので、Apple代理店か他国における先行発売からの転売により入手した人も多いのだろう。Apple製品に関しては(純正以外の)オンラインショッピングでの販売は主流でないのかもしれない。

ケータイは高齢者向けのものがよく売れた

ケータイは高齢者向けのものがよく売れた

 Nokia 5230以上に圧倒的に売れた携帯電話が、電卓のようなフォルムの“中国版かんたんケータイ”で販売数は2万3360台となっている。

メディアプレーヤー製品は中国メーカーが強いことがうかがえる

メディアプレーヤー製品は中国メーカーが強いことがうかがえる

 iPod touchを紹介したついでに競合製品を見ていくと、「台電」というメーカーの製品がmp4プレーヤーを4万1360台、mp3プレーヤーを2万8300台販売した。そのほかにも売れた製品は中国メーカーのものばかりで、ポータブルメディアプレーヤーのジャンルは中国メーカーの天下だ。スポーツをする人向けのメモリータイプのウォークマン「NWZ-W252」は4400台が販売された。

デジカメはミラーレスより“ミラーあり”が人気

デジカメは日本のメーカーが安定した人気を獲得

デジカメは日本のメーカーが安定した人気を獲得

 日本のメーカーが中国で強いのは、デジカメとデジタルビデオカメラである。キヤノンの「IXS 210」(日本ではIXY 10S)が9817台で一番人気。デジタル一眼レフカメラでも、キヤノンが人気で、「EOS 550D」(日本ではEOS Kiss X4)が2260台売れた。

 “ミラーレス一眼”ではソニーの「NEX-5」が一番人気ではあるが、販売台数は357台。メンツも大事なこの国では、伝統的に見た目が高級そうなクラシックなデジタル一眼レフカメラがまだまだウケそうだ。

 デジタルビデオカメラもキヤノンが人気だが、最も人気のモデルでも販売台数は601台と、デジタル一眼レフカメラに届かない。

 デジカメ画像を再生するデジタルフォトスタンドは、中国メーカー「愛国者」による8インチの製品が1921台。日本ではデジカメ画像のアウトプットとしてプリンターがセットとなりがちだが、中国ではプリンターを家庭に置く習慣は日本ほどないことから、プリンターの製品ジャンル自体が発表されていない。

日本の電子辞書がなぜか人気

どんな一般的な学習機よりもニッチ(?)な、カシオの中日辞典がオンラインでは売れている

どんな一般的な学習機よりもニッチ(?)な、カシオの中日辞典がオンラインでは売れている

 意外かもしれないが、中国ではカシオ計算機の電子辞書が極めて人気だ。中国市場における日系企業では唯一、中国向けに製品をリリースしているカシオ。販売数は2533台なのでiPadなどとほぼ同じである。

 中国で販売されている電子辞書の中で、カシオの電子辞書が圧倒的な質感を持っていて、日本語学習者で所有する人は結構見たことがある。カシオの電子辞書は今まで紹介した製品と異なりかなりニッチで、内陸の省都クラスではなかなかお目にかかれない。実店舗で売っているところが多くないので、オンラインショッピングサイトで購入するのではないか。

 電子辞書は日本語学習者向けとニッチ市場ながら売れたが、それよりも多くの人が利用できそうな電子ブックリーダーの販売数は微妙だ。

 最もメジャーなメーカーの「漢王」がリリースする「F30」なる電子ブックリーダーの販売数は、カシオの電子辞書より安いにも関わらず1182台。リアル店舗で売っているのでそちらで買う人もいるだろうが、それにしても少ない数字だ。

日本の“ニッチ”な製品が中国では広告塔になる

 年間オンラインショッピングの販売台数ランキングを通して見ると、無名のメーカーが最も売れるというケースも目立つ。もっとも、中国ではIT系サイトを1ヵ月も見ていればよくお目にかかるメーカーばかりだ。

 中国でランキングに入るメーカーは、デジカメなど特別な技術を必要としないものに関しては、「特別安い価格」か「豊富なラインアップ」か、あるいは「ある製品ジャンルに注力している」か、そのいずれかであればランキングトップになる。つまり、そのジャンルで外資系メーカーをも抜き、最も売れる。

 例外は“かんたんケータイ”。中国にはシンプルな携帯電話の選択肢があまりないのが、売れた一因だろう。今後、中国が日本に迫り、追い抜く勢いで超高齢者社会となっていく中で、簡単ケータイをはじめとした中高年向け製品はいっそう売れるのではないだろうか。

 日本のメーカーは、正攻法な製品をリリースするのも大事だが、Librettoのような“2画面PC”や“中日電子辞書”など、ややニッチと思われる製品もリリースし続けてほしい。売る場所は限定されてしまうだろうが、買いたいと思う人がネットで買い、それが企業の広告塔となるだろう。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン