歩留まりに苦しむGF100コア
GeForce GTX 470/465も解決にはならず
GF100が陥った問題は、まさしくこれである。結果としてGF100は、512SP(NVIDIA用語で言うところのCUDAコア)の構成で設計されながら、これをすべて利用しようとすると、歩留まりが恐ろしく低いものになってしまった。
加えて、熱の問題も非常に大きかった。NVIDIAとしては40nmプロセスを使う第2世代とあって、消費電力はそれほど問題にならないと思っていたようだ。ところが、蓋を開けてみると異常に発熱が多く、これが理由で動作周波数を上げる余地も非常に少なかった。おまけに発熱が多くて温度が上がりやすいため、先に説明したVIAの変形による信頼性低下の問題まで引き起こすことになってしまう。
結局、GF100を最初に搭載したGeForce GTX 480は、CUDAコアを512個(32×16)ではなく480個(32×15)構成として歩留まりを引き上げる。つまりCUDAコアに欠陥があっても、そのコアを含むブロックを無効として正常品とすることで、なんとか出荷された。
GeForce GTX 480は「TDP 250W」とされていたものの、実際はもう少し消費電力の多いコアも多数混じっていたようだ。発熱による信頼性低下は依然として問題だったし、歩留まりの方も1ブロック無効にしただけでは、救いきれないチップも多かったようだ。
そんなわけで、448コア(32×14)構成の「GeForce GTX 470」や352コア(32×11)構成の「GeForce GTX 465」も同時にリリースされている(編注:製品発表の時期はずらされている)。これらは動作周波数も下げることで、発熱や信頼性低下をカバーすることになった。
しかし、500mm2を超えるダイを搭載したグラフィックスカードを、GeForce GTX 465では279ドル(日本の場合、2010年6月時点で3万円台)で販売するというのは、良くてとんとん、悪いと赤字になりかねないレベルだ。「廃棄するよりはマシ」という程度でしかない。何かしらの抜本的な解決が必要なのは明白だった。
救世主「GF104」コアで一息つく
これに対する最初の対策が、2010年7月にリリースされた「GF104」コアである。GF104はアーキテクチャー的にはGF100と互換ながら、GPUとしての効率を強化するように内部構造が変更さた。その代わり、GPGPU的な要素、例えば倍精度浮動小数点演算性能は大幅に削られた。
これにより、ダイサイズをGF100の529mm2から、367mm2へと大幅に縮小。縮小しながらも極端にGPU性能を落とさずに済み、また内部構造の簡素化によって、VIAにまつわる問題をほぼ解決した。もちろん、ピーク性能という点ではGF100の方がはるかに上なのだが、現実的な消費電力(TDPは160W)と価格で、まともなDirectX 11対応GPUがリリースされたことのインパクトは大きかった。
GF104コアを搭載した最初のモデルが、「GeForce GTX 460」である。なぜか発売当初は、バス幅256bitの1GBメモリー搭載版(その後2GB版も追加)と、バス幅192bitの768MBメモリー搭載版(ラスタライザーの数も減っている)の2種類がラインナップされた。しかし価格差がほとんどなかったうえに、性能も落ちる点が嫌われたためか、768MBモデルはあっという間に消えている。
このGeForce GTX 460は、OEM専用に若干動作周波数を落としたモデルがラインナップされたほか、あとにはシェーダー構成をやや減らした「GeForce GTX 460SE」が、やはりOEM向けにラインナップされた。
このGF104コアをベースに、メインストリームの下の方やバリュー向けとして登場したのが、「GF106」コアと「GF108」コアである。GF106は「GeForce GTS 450」、GF108は「GeForce GT 430」としてラインナップされ、GeForce GT 240以上の製品を置き換えた。
GF104同様に、これらにもOEM向けラインナップが展開されたのだが、ちょっと面白いのはOEM向けのGeForce GTS 450だ。リテール向けが128bit幅のメモリーバスで1GBメモリー搭載なのに対して、OEM向けはバス幅を192bitに増やして1.5GBメモリー構成で販売されている。シェーダーそのものはむしろ減らしているだけに、どういう要求がOEMから寄せられた結果なのか、ちょっと興味深いところだ。
また、OEM向けのGeForce GTS 450のメモリーを、GDDR3に置き換えた「GeForce GTS 440」が、やはりOEM向けにラインナップされている。また、ローエンドのGeForce GT 430はメモリーにGDDR3を使い、構成も最小限となっている。だが、リテール向けとしては補助電源が必要ない唯一の構成であり、ロープロファイル構成も容易とあって、それなりのニーズに応えた製品となっている。
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