28nmプロセス対応の次世代版は
年内に登場するか?
ここからは今後のロードマップを予想してみる。まず「GF116」ベースの製品が2月中か、遅くても3月にはリリースされるだろう。図では名称を「GeForce GTS 550」と記したが、GTSブランドをやめて「GT 550」になるかもしれない。
GTS 550は性能レンジ的に、GeForce GTX 560 TiとGeForece GTS 450の間あたりに位置することになると思われる。またNVIDIAの通例に習い、今後は「GeFore GTX 570/560/550/GT 440」のOEM向け製品が多数出てくると思われる。
またこれらとは別に、GF110×2のトップエンド製品が2月~3月に登場するという話もある。目的は言うまでもなく、「Radeon HD 6990」への対抗だ。300Wの消費電力枠に収めるために、動作周波数はかなり落とすものと思われるが、Radeon HD 6990もやはり大幅に動作周波数を落とさないと300W枠に収まらないので、そのあたりも同等であろう。価格的にもかなり高価な製品になるだろうが、あくまでトップエンスージアスト向けの製品であり、大量販売を狙うものではないから実現に問題はないだろう。
もっと先の話をすれば、TSMCの28nmプロセスへの移行が待ち構えている。TSMCの28nmプロセスは、すでにネットワーク用半導体のNetLogic社が、最初の製品のテープアウトを済ませたことをアナウンスしている。NVIDIAやAMDは、これに続く第2~第3グループに属していると思われる。そうなると早ければ3月、遅くとも6月までにはテープアウトが済むはずで、そうでなければ2011年中の製品リリースは難しいだろう。
ちなみに、この28nmプロセス世代はコード名「Kepler」と呼ばれており、消費電力あたりの演算性能(GFLOPS/W)が「Tesla(GT100)の5倍」という目標になっている。TeslaとはGeForce GTX 200シリーズのことで、単精度浮動小数点演算ではそこそこだが、倍精度になるとかなり性能が落ちる。
実際に、TeslaからFermi(GF100)で浮動小数点演算の絶対性能は約6.6倍に、消費電力あたりの性能でも約5.2倍になっている。5倍がもし倍精度なら、すでに実現されているわけだ。そのため、話は単精度演算であろうと思われる。55nmのGeForce GTX 200シリーズと28nmプロセスのKeplerでは、同じ構成なら消費電力は消費電力がざっくり半分以下になる。これに加えて、省電力化の仕組みを積極的に取り込むことで、5倍の性能を狙うというあたりではないかと想像される。
CUDAコア数そのものを理論上2倍にすることは可能だが、現実的には難しそうだ。省電力機構の増加や、40nm世代よりもさらに増える統計論的ゆらぎに対応するためのマージン、さらには歩留まり向上を狙ってのダイサイズ縮小などを考慮する必要もある。そうなると、常識的にはCUDAコア数は1.5倍程度に抑えるのではないか? というのが筆者の推定である。
1.5倍程度ならば、現行の384bitメモリーバスのままGDDR5の信号周波数を上げて対応できる計算だ。NVIDIA製品は今のところ、GDDRの信号レートは4GHzどまりだが、AMDはすでに6GHz近くまで上げてきている。つまり、あと50%の帯域向上のマージンがNVIDIAに残されているわけで、1.5倍に増えるCUDAコアとメモリー帯域の50%向上で、ちょうどマッチすることになるからだ。
この連載の記事
-
第764回
PC
B100は1ダイあたりの性能がH100を下回るがAI性能はH100の5倍 NVIDIA GPUロードマップ -
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 -
第757回
PC
「RISC-VはArmに劣る」と主張し猛烈な批判にあうArm RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第756回
PC
RISC-Vにとって最大の競合となるArm RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第755回
PC
RISC-Vの転機となった中立国への組織移転 RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第754回
PC
インテルがCPUの最低価格を82ドルに引き上げ、もう50ドルでは売れない製造コスト問題 インテル CPUロードマップ - この連載の一覧へ