XMDF
シャープが策定した電子書籍フォーマットXMDFは、同社小型端末「ザウルス」向け電子書籍配信サービス用として2001年に登場して以来、多くの電子書籍サービスに採用された実績を持つ。NTTドコモの「M-stage book」サービスやKDDI(au)の「EZ-book」サービスをはじめ主要携帯キャリアに公式採用されていることもあり、十分有力な電子書籍フォーマットといえるだろう。
表示はリフローを基本としたもので、そこに多彩な日本語表現を可能にする仕様がいくつも盛り込まれている。たとえば、縦中横(縦組みの文書の中で英数字を横組みで表現する方法)やルビのサポート。行頭/行末の禁則文字や追い出し文字をタイトルごとに設定できたり、外字を画像またはフォントとしてコンテンツに内包したりできる。
小説などの文芸書、コミックで豊富な採用実績を持つことも、XMDFの特徴のひとつ。シャープが公開した「電子ブック技術(XMDF)の取組みと国際標準化推進について」(PDF)によれば、対応コンテンツの市場流通ボリュームは、小説など文字中心のものが3万点、コミックが6万3000点、辞書が100点としている。
2006年に提供が開始されたバージョン2.0では、各種表示効果や音/振動など、携帯電話向け電子コミックをターゲットした表現方法がサポートされている。コンテンツ全体に対し検索することもできるため、電子辞書端末でも利用されている。なお、携帯電話向けにはサブセット規格「コンパクトXMDF」も用意されている。
昨年12月に発売されたシャープ製タブレットデバイス「GALAPAGOS」(EB-W51GJ-R/S、EB-WX1GJ-B)は、従来のXMDFを拡張した「XMDF 3.0」に対応している。レイアウトを変えずに文字を拡大縮小したり、見出しや図の位置を固定しつつも文字サイズだけを変えたりという表示は、XMDF 3.0でサポートされたものだ。
左の写真が、ソニーの電子書籍端末「Reader Touch Edition」(PRS-650)と「Reader Pocket Edition」(PRS-350)。右は、KDDI(au)がリリースした電子書籍端末「biblio leaf SP02」だ。どちらも、オンラインストアから購入できる電子書籍タイトルはXMDFオンリーだ
.book(ドットブック)
ボイジャーが提唱する.bookも、日本で広く利用されている電子書籍フォーマットのひとつで、表示はリフローを基本とする。正確には、HTMLを独自タグにより拡張した「TTX」が電子書籍フォーマットで、.bookと「TTZ」は配布用フォーマットに位置付けられる。.bookがウェブブラウザーでの閲覧に対応する以外、フォーマット自体の差はないが、基本的には.bookが出版社向けでTTZが個人出版向けとされ、.bookを制作するためにはボイジャーとのライセンス契約が必要となる。
すでに触れたように、PDFは電子書籍フォーマットとしての側面を持つが、レイアウトが紙の印刷物に忠実(リフローできるよう出力することは可能)なため、スマートフォンのような小型端末で長文を読む用途には不向きとされている。しかし逆にいえば、紙の印刷物をほぼそのままのデザインで電子化できるため、雑誌のようにレイアウトが重要なコンテンツでは本命視されている。
一定期間経過後は読めなくなるようにするなど、配布後にコンテンツをコントロールすることも可能なことから、独自のポジションを持つ電子書籍フォーマットとなることだろう。
CEBX/JEBX
中国の方正グループが提唱する「CEBX」およびその日本語対応版「JEBX」は、縦書きのサポートなど日本語の電子書籍に活用できるスペックを備えた電子書籍フォーマットだ。同社は中国国内の新聞社向け電子出版システムでトップシェアを持ち、中国の電子書籍の約8割はCEBXで提供されているという。また、中国内において国家標準の電子書籍フォーマットとして認定されることを目指しているようだ。
中国は書物の検閲が厳しく、日本の出版物が広く流通する可能性は低いが、電子書籍の形であれば話は別で、電子書籍化された日本のファッション雑誌が高い売れ行きを示しているとも聞く。電子書籍ビジネスをグローバルに考えた場合、同じ漢字文化圏という共通項を持つだけに、今後の可能性に注目したい。
(次ページへ続く)

この連載の記事
-
第6回
トピックス
電子書籍、電子コミックはここで買え! -
第5回
トピックス
出版社、書店の状況――役割の変化に気づいた者が勝つ -
第3回
トピックス
主要携帯キャリア動向—主戦場はスマートフォンと専用端末へ -
第2回
トピックス
特徴は?値段は?電子ブックリーダー選びのコツ! -
第1回
PC
これだけは知っておけ!日本の電子書籍事情 -
トピックス
電子書籍を選ぶ前に知っておきたい5つのこと - この連載の一覧へ