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クラウドとビッグデータの時代を乗り切るインフラを

パブリッククラウドやSMBにも注力する次のEMC

2011年01月27日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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1月26日、EMCジャパンは2011年の事業戦略についての説明会を行ない、新社長の山野修氏がクラウドとビッグデータへのフォーカスを明らかにした。また、先週ワールドワイドで発表された新製品の1つであるSymmetrix VMAXの新版についての説明が行なわれた。

2011年はクラウドとビックデータに注力

 冒頭、EMCジャパン会長の諸星俊男氏は、EMCの2010年の業績を説明。「売り上げが21%増、利益(GAPベース)も75%増という好調な業績を実現できた」と好調な業績をアピールした。日本法人の業績も好調で、世界中でも高い利益率を実現したという。諸星氏は就任から3年掛けて行なってきた直販とチャネルの営業の改善が功を奏したという。

EMCジャパン会長の諸星俊男氏

 次にEMCジャパンの代表取締役社長に就任した山野修氏が2011年の事業戦略について説明した。山野氏はRSAセキュリティの社長を10年近く務め、2006年のEMCグループの傘下入ったとともに、EMCジャパンの取締役に就任。2010年にEMCジャパンとRSAジャパンとの合併を機に、2011年1月1日付けで代表取締役に就任したという経緯だ。

EMCジャパンの代表取締役社長に就任した山野修氏

 山野氏は、まずEMCを「情報インフラの先進的リーダー」と位置づけ、傘下のヴイエムウェアなどとともにストレージにとどまらない幅広いインフラ系の製品やソリューションを展開し続けるというビジョンを示した。そして、EMCがリーダーであり続けている理由として莫大な投資を挙げ、「過去5年に1年分の売り上げに近い額を研究開発と買収に回している。IT業界でこれだけ投資に回している会社も少ない」と競争力の源泉について語った。買収に関しては2010年も継続的に行なっており、セキュリティベンダーのアーカー(Archer)、データウェアハウスベンダーのグリーンプラム、そしてスケールアウトNASベンダーのアイシロンを買収している。

 そして、次のEMCの戦略としては、近年同社が提唱しているクラウドへの移行を挙げた。ただ、昨年まではプライベートクラウドに限定していたが、今年がパブリッククラウドへの移行も含めた。「今までは(オンプレミス向けの)ハイエンドストレージがメインでしたが、製品ラインナップが拡充させたことで、パブリッククラウドを提供するサービス事業者さんにも展開できるようになった」(山野氏)ということで、両面展開が可能になったからだという。今後はマルチプロセッサーや仮想化、ネットワークなどの技術がクラウドへ集約し、ITのサービス化を支援。この流れをEMCが技術やソリューション面で強力にサポートする。

技術のクラウドへの集約

 もう1つ山野氏が挙げたのが、ビッグデータ時代の到来というトレンドだ。EMCとIDCで共同で行なった調査によると、2009年に0.8ゼッタバイトだったデータ量は、2020年には約44倍以上の35.2ゼッタバイトに拡大するという。しかも、この膨大なデータは95%が構造化されておらず、このままでは管理が破綻することになる。こうした今後「デジタルユニバース」という状態にも対応していかなければならないという。

ビッグデータの時代が到来

 こうした「クラウド」と「ビッグデータ」といったトレンドに対応するため、先週ワールドワイドで「Record Breakers(記録を塗り変える)」という鼻息の荒い発表を行ない、ハイエンドストレージ「Symmetrix VMAX」新版のほか、ミッドレンジのSANストレージのCLARiXとNASのCelerraを統合した「VNX」、データ量自体を削減する重複排除の製品など、41にも上るストレージ製品を刷新した。

「Record Breakers」を掲げ、41にも上るストレージ新製品を投入した

 新生EMCジャパンの今年の展開についても説明した。「よりシンプルで効率、そしてお手頃な製品&ソリューションを展開していきたいと考えている」(山野氏)とのことで、ローエンド製品やバックアップ関係の拡大、ビッグデータ対応製品も提供していく予定となっている。

粒度の細かくなった自動階層化「FAST VP」の実力

テクノロジー・コンサルティング本部 プロダクト・ソリューションズ統括部 統括部長 糸賀誠氏

 山野氏の事業戦略説明のあとには、テクノロジー・コンサルティング本部 プロダクト・ソリューションズ統括部 統括部長 糸賀誠氏が前述したSymmetrix VMAXの新版に関する説明を行なった。Symmetrixは、同社の主力製品ともいえるハイエンドストレージ。糸賀氏は大容量化や階層化管理を行なう機能、フラッシュドライブの搭載など、これまでの革新点を紹介。そして、2009年にはSymmetrix VMAXを投入し、今回はバージョンアップを提供すると説明された。

新Symmetrix VMAXの3つの新機能

自動階層化を可能にするFASTの強化版「FAST VP」

 新機能の目玉は、自動階層化を可能にするFASTの強化版「FAST VP」である。FAST VPでは、業界最小の8MB単位での階層化管理を実現し、「無駄な移動がなく、かつ高速に階層化が行なえ、約5倍近い効率化を実現する」(糸賀氏)という。具体例として糸賀氏は、140TBのデータを拡大する1128台のHDDをFAST VPで効率化すると、全体3%のフラッシュドライブ、20%のFC HDD、77%のSATA HDDという全152台に移行できる例を挙げた。これにより、パフォーマンスが40%向上し、コストは40%削減されるという。

 また、古いストレージから新しいストレージへの移行を無停止で行なえる「Federated Live Migration」、専用CPUでデータを暗号化することで高いセキュリティとパフォーマンスを実現する「Data@Rest Encyption」などの機能も搭載された。さらにソフトウェアの改良により、従来機種に比べ2倍高速化され、最大500万台の仮想マシンを単一クラスタに格納できるようになったという。

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