分断した情報がつながることで、コンテキストが生まれる
── NAVERが考えるキュレーションの形というのは?
森川 これまで日本ではソーシャルといえば「ゲーム」という流れだったと思うんです。情報を作るよりもゲームで儲けることに一所懸命だったのがここ数年ですね。わたしたちもハンゲームを運営していますので、他人のことは言えないのですが(笑)
ソーシャルゲームでも人間関係はもちろん構築されます。とはいえ楽しいけれど、意味の薄い人間関係が増えているとも言えます。インターネットのそもそもの性格を考えると、やはりそこには情報を作る人の存在が重要ですし、その人たちが作る情報の量が増えないと知識レベルも上がらないわけです。そういう意味でNAVERでは社会的意義のあることをやっている、と自負しています。
世界的に見ても、「ソーシャルも検索も強い」というのは珍しい例ですが、韓国NAVERはその両方を備えています。ぼくたちも、日本の文化・市場にあわせた「まとめ」のような独自サービスも開発しながら、韓国との連携も図りつつそれを深化させていきたいと考えています。
さきほど、主観を排しているとお話ししましたが、何をどうまとめるかという括りにはコンテキスト(文脈)は生じています。一次情報をまとめて二次情報が作られていくわけですが、その順番を含めてそこには文脈がやはり存在するのです。たとえばアイドルのデビューから順に顔を並べていくまとめがあると、「どんどんキレイになる」というコンテキストが生じるといった具合ですね。
特に、ソーシャルメディアの利用がこれから普及していくと、「情報が分断されやすい傾向が生まれる」と考えています。たとえばTwitterなどはその典型です。これまでは、こうした分断した情報をユーザーの頭の中で1つの括りとしてまとめていたわけですが、それをぼくたちはネットのプラットフォーム上でつなぐ仕組みを用意しました。その仕組みでパブリッシングされたものを、また別のユーザーが楽しんだり、役立てたりする循環が生まれます。
それを積み重ねることでNAVER独自の検索サービスを実現していきたいと考えています。
── 確かに今のところソーシャルの分野ではGoogleが成功事例を作れていないこともあり、うまく機能すれば検索の弱点を補えることにもなりそうです。ただ一方で、狭い範囲でしか語られない文脈で紐付けが行われてしまうと、検索結果にノイズが増えるということにはなりませんか?
森川 基本的にまず私たちは、玉石混合の世界を作ることを目指しています。その上で、ソーシャルの世界に「ノイズ」は果たして存在するのか、という意識ももっています。ある人にとってノイズでもある人にとっては「玉(ぎょく)」かもしれない。けれども、その判断は現状の仕組みでは一義的にしかできないのが問題であり、検索とソーシャル両方に技術とプラットフォームを持つぼくたちであれば、そこを先ほどお話しした「レピュテーション(評価)モデル」でうまくバランスが取れるようにしたいと考えています。
