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電子書籍を選ぶ前に知っておきたい5つのこと 第3回

主要携帯キャリア動向—主戦場はスマートフォンと専用端末へ

2011年01月26日 16時00分更新

文● 小山安博

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 電子書籍を利用するための端末としてもっとも期待されているのがスマートフォンやタブレット端末だ。iPhoneやiPadの登場で、国内にもこうした端末が急増しており、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの主要3キャリアが製品を発売している。それだけでなく、3キャリアはスマートフォン向け電子書籍配信にも力を入れ始めている。

 日本の携帯キャリアのビジネスモデルは、キャリア自身が独自のサービスを提供し、端末を自社のサービスに最適化して販売するというものだ。NTTドコモのiモードに代表されるように、これらはすでに大きな成功を収めており、スマートフォンが普及の兆しを見せている今、キャリアが同様のサービスに注力するのも当然の流れだろう。

フィーチャーフォン向け電子書籍市場の現在

 電子書籍というと、米国の方が先行しているようなイメージがあるが、これは一面的な見方にすぎず、日本でも電子書籍配信サービスはすでにスタートしていた。

 たとえば、1995年にパピレスがパソコン通信向けに「電子書店パピレス」を開設している。ビットウェイが、1999年にPC向けビューワー「Book Jacket」、2001年からPDA向けに「Book Jacket 2」を配信をしている。角川書店、講談社、光文社、集英社、新潮社、中央公論新社、徳間書店、文藝春秋による電子書籍販売サービス「電子文庫パブリ」は2000年のスタートだ。

 その後、一般の携帯電話(フィーチャーフォン)向けに上記企業を含む公式サイトが電子書籍配信サービスを行ない、一大市場を形成することになった。これら公式サイトでは、小さな画面でも見やすいユーザーインターフェースを備えた電子コミックス配信が支持され、主流となった。

 またこの市場形成は、高速なデータ通信の登場、パケット定額制によるダウンロードのしやすさ、月額制による電子書籍購入も可能なサービスの存在、電話利用料金との合算による請求など、ユーザーにとって利用しやすい環境が整えられた影響が指摘されている。

 2002年、NTTドコモが電子書籍をPDAやPCに配信するサービス「M-stage book」を開始しており、2004年にはマンガの配信をスタートさせた。ソフトバンクモバイルも、2004年に電子コミックの配信を始めている。2005年、auブランドの携帯電話向けインターネット接続サービス「EZweb」において、書籍関連サービスのポータルサイト「EZ Book Land!」が公開された。EZ Book Land!は、電子書籍販売のサービス「EZブック」と、紙の書籍販売の新サービス「au Books」から構成されていた。

 現在の状況が伺える情報としては、まずシャープが「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」において公表した「電子ブック技術(XMDF)の取組みと国際標準化推進について」(PDF)がある。これによれば、電子書籍フォーマットXMDFに対応する再生環境の市場ボリュームは、KDDI端末が3000万台、ソフトバンクモバイル端末が1600万台、NTTドコモ端末が1500万台、ゲーム端末が1000万台となっている。

XMDFベース再生環境の市場ボリューム
KDDI(au)端末 3000万台
ソフトバンクモバイル端末 1600万台
NTTドコモ端末 1500万台
ゲーム端末 1000万台

 またセルシスとボイジャーは、フィーチャーフォン・スマートフォン向け総合電子書籍ビューワー「BS Reader」(旧:BookSurfing)を提供している。KDDI(au)/NTTドコモ/ソフトバンクモバイル/ウィルコム/イー・モバイル向けの日本国内1100以上のサイトで採用されており、コミックを中心に9割を超えるシェアをうたっている。両社は、BS Readerに「.book」(ドットブック)フォーマットの読み込み機能を追加し、テキスト系電子書籍への対応を強化する予定だ。

 インプレスR&D インターネットメディア総合研究所の「電子書籍に関する市場規模の推計結果」(2010年7月)によれば、フィーチャーフォン向けの国内電子書籍市場はすでに513億円規模に達しており、市場は拡大を続けている(電子新聞や電子雑誌などの定期発行媒体、教育図書、企業向け情報提供、ゲーム性の高いものは含まず)。

 対して、新プラットフォーム(iPhoneを中心とするスマートフォン)対象の電子書籍市場規模(2009年度)は約6億円と推計されているものの、Android端末の登場などにより、スマートフォン自体はさらなる普及が予測されている。これによって、フィーチャーフォン向けを追い抜くほどの電子書籍市場の拡大が期待/予測されており、注目が集まっているといえるのだ。

電子書籍市場規模の推移(単位:億円)。インプレスR&D インターネットメディア総合研究所の電子書籍に関する市場規模の推計結果より作成

電子書籍市場規模の推移
(電子書籍に関する市場規模の推計結果より)
年度 PC向け フィーチャーフォン向け 新プラットフォーム向け
2002年度 10億円
2003年度 18億円 1億円
2004年度 33億円 12億円
2005年度 48億円 46億円
2006年度 70億円 112億円
2007年度 72億円 283億円
2008年度 62億円 402億円
2009年度 55億円 513億円 6億円

 また、同研究所の「電子書籍ビジネス調査報告書 2010[新プラットフォーム編]」では、PCおよびフィーチャーフォン向け電子コミックが、2009年度電子書籍市場全体の約81%(457億円)を占めている点を指摘しており、市場を牽引していることが分かる。

 スマートフォン/電子書籍専用端末向けにおいても、やがては電子コミック配信が主流となる可能性がある。

2009年度電子書籍市場の内訳。インプレスR&D インターネットメディア総合研究所「電子書籍ビジネス調査報告書 2010[新プラットフォーム編]」より作成

電子書籍市場規模の2009年度内訳
(「電子書籍ビジネス調査報告書 2010[新プラットフォーム編]」より)
PC向け フィーチャーフォン向け
電子コミック 29億円 428億円
電子書籍(文芸系) 18億円 44億円
電子写真集 8億円 41億円
合計 55億円 513億円

(次ページへ続く)

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