この1月は、インテルとAMDから相次いで「新プラットフォーム」が登場した。そのせいもあってか、年初にラスベガスで開かれた家電の国際展示会「International CES 2011」も、PC系の動きに注目する人が例年以上に多かった印象を受けた。
今回試用するのはそんな新プラットフォームのひとつ、AMDの「Fusion APU」を搭載したソニーの「VAIO Y」(VPCYB19KJ)こと、通称「VAIO YB」である。新プラットフォームはこの低価格ノートに、どのようなパワーを与えたのだろうか。
1チップで省電力・高性能!?
Fusion APUとは
まず最初に、Fusion APUの特徴をおさらいしておこう。Fusion APUとは、AMDのモバイル向け新プロセッサーの名称である。製品シリーズ名としては、低価格ノート向けの「AMD E」シリーズと、ネットブック向けの「AMD C」シリーズの2種類がある。VAIO YBが採用しているのは、「AMD E-350」(クロック1.6GHz、2コア)である(関連記事)。
Fusion APUはCPUコアとメモリーコントローラーだけで構成されているわけではない。従来外付けであったノースブリッジ部やGPUを1ダイに集積し、省電力化と低コスト化を両立した新世代プロセッサーと言っていい。Fusion APUを採用したプラットフォームは「Brazos」と呼ばれており、VAIO YBもこのBrazosプラットフォームで作られた製品、と言える。
では、VAIO YBの性能はどのくらいなのか? まずはWindowsエクスペリエンスインデックスを見ていただこう。
総合値は「3.7」(プロセッサの値)。さほど高くはないのだが、グラフィックの値がWindowsデスクトップで「4.6」、ゲーム向けでは「5.7」となっている点に注目していただきたい。
操作感で言っても、極端に「遅い」とは感じない。VAIO YBを価格帯的に言えば、「高いネットブック」くらいの位置にあるわけだが、動作はネットブックというよりも、CULVノートのそれに近い。ただし、感触としては「Atomよりは確実に速いが、Core 2 Duoには若干劣るのではないか」というレベルである。少なくとも、ウェブ閲覧やオフィスアプリの利用であれば、妙なひっかかりも感じず、かなり快適に使える印象だ。
また、グラフィック性能が十分にあることから、Windows Aeroをオンにした状態でもまったくもたつきは感じない。メモリーが2GBであることもあってか少々HDDへのアクセスが多く、その分スピードがそがれている印象はあるが、この価格帯の製品であると考えれば仕方がないところである。
ちなみに、VAIOは全製品で64bit版OSを採用する方向に舵を切っているが、本製品については32bit版OSがプリインストールされている。メモリーの最大搭載量も4GBまでなので、そのことが大きな問題となることはないだろうが、64bit版を狙っている方にはおすすめしかねる製品、ということになるだろう。

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