富士通がメインフレームで培ってきたノウハウを結集して作り上げた基幹系IAサーバーが「PRIMEQUEST」である。本稿では、2010年に発表された新モデル「PRIMEQUEST 1000シリーズ」の開発背景と特徴についてインタビューした。
メインフレームの設計思想をIAサーバーに持ち込む
「オープン系サーバーでメインフレームクラスの信頼性を実現」という開発コンセプトの下、富士通がIAサーバーの最高峰を目指した「PRIMEQUEST」を投入したのは、いまから5年前にさかのぼる。メインフレームやUNIXサーバーが席巻してきたミッションクリティカル分野を、LinuxやWindowsなどのIAサーバーで切り開こうという高い志を掲げ、インテルの64ビットCPUであるItaniumを搭載した「PRIMEQUEST 400」が2005年4月に登場した。
こうしたPRIMEQUESTのコンセプトについて、初代PRIMEQUESTから開発・プロモーションの中核メンバーであるプラットフォームビジネス推進本部の岸本敏裕氏は、「メインフレームの安定性とオープン系サーバーの経済性のいいとこ取りをしようというのが、PRIMEQUESTの生まれた背景です。ですから、信頼性もスケーラビリティも高い。一方、ミッションクリティカル領域で課題となる汎用OSに対する不安は、ハードウェアでカバーしようという発想を持っています」と語る。
こうしたコンセプトを実現するため、PRIMEQUESTでは部品点数の削減や厳しい部品スクーニング(選別)、組み立て後の製品検査など、メインフレームと同等の開発・品質保証体制を確保。「ノイズ耐性を向上するために伝送特性のよい基材を使用し、伝送品質に影響を与える表面配線を極力使用していません。部品1つとっても、採用時の単体試験で品質に問題があった場合、製造元に結果をフィードバックし、品質強化試験をおねがいしています」(岸本氏)という。そして、内部コンポーネントは徹底的に二重化・冗長化を施し、ハードウェアの故障時には故障部位のみを切り離して稼働を継続できるよう設計されている。もちろん、パフォーマンスは折り紙つき。LinuxやWindowsで、世界最高クラスのベンチマーク性能を次々とマークしてきた。
Xeonプロセッサー採用の新PRIMEQUESTへの道
PRIMEQUEST 400の登場以降、Itaniumの進化ともに2006年に「PRIMEQUEST 500シリーズ」、2008年に「PRIMEQUEST 500Aシリーズ」を次々リリース。そして2010年、高い信頼性や品質といった特徴をそのままに、CPUをXeonプロセッサーに替えた第2世代の「PRIMEQUEST 1000シリーズ」が登場した。
モデルは7UのPRIMEQUEST 1400Sのほか、12UのPRIMEQUEST 1400E/1400L/1800E/1800Lの5機種が市場に投入されている。このうち末尾にLがつく2モデルは、最長10年の保守をコミットするロングライフモデルで、保守部品が確保されるほか、専門の保守体制が確立される。「いままでは個別対応だったのですが、今回はカタログモデルとして10年のロングライフモデルを作りました。ハードウェアだけでなく、Red Hat Enterprise Linuxやミドルウェアなどをサポートする体制をきちんと構築できたということです」(岸本氏)。
新PRIMEQUESTでのItaniumからXeonプロセッサーへの移行に関して、岸本氏は「5年前の時点で基幹業務に耐えうる RAS(Reliability、Availability、Serviceability)を持ったCPUはItaniumしかなかったこともあり、インテルと手を組んで開発してきました。しかし、(ItaniumのIA64アーキテクチャでは)実際にはISV(独立系ソフトウェアベンダー)の製品がなかなかついてこられなかった部分もありました。そこで、より裾野を拡げるため、Xeonプロセッサーを採用することにしたのです」と語る。汎用のCPUとOSを用いたミドルウェア、アプリケーションなどの選択肢が拡がる点が大きいわけだ。もちろん、最新のXeonプロセッサーでは、マルチコアアーキテクチャによる高い処理能力のほか、省電力やRASの機能も充実している。こうした背景もXeonプロセッサー採用の理由だ。
見逃せない省エネ・省スペースの取り組み
さて昨年の記者発表会では、ItaniumからXeonプロセッサーへの移行のみが大きく取り上げられた感もあるが、新しいPRIMEQUESTで注目したいのは、なんといっても省スペース・省エネルギーへの取り組みだ。ハードウェア関係の開発を手掛けたIAサーバ事業本部の須江智志氏は、「同等構成で消費電力3分の1を目指しました。従来製品は最上位モデルでCPUなどをフル搭載すると1万2000Wくらいの電力になりましたが、PRIMEQUEST 1000では約4000Wに削減されています。これは最新CPUの効果だけではなく、装置全体の部品も大幅に削減しましたし、高効率電源を採用したり、ファンの冷却制御を工夫したりといった取り組みで実現したものです」と述べる。
たとえば、冷却は風の流れを何度もシミュレーションし、高発熱部品を効率よく冷やすよう設計した。また、ファンの制御も2~3段階から細かい多段階制御を導入している。さらに、消費電力の「見える化」も進めた。同じくIAサーバ事業本部の小林亮一氏によると、「サーバーマネジメントボードで消費電力を調べ、管理ツールからグラフ表示する機能を埋め込んでいます」といった工夫もあるという。こうした努力の結果、富士通グループの製品環境グリーンアセスメント規定のうち、環境配慮トップである「富士通スーパーグリーン製品」に認定されている。
また、PRIMEQUEST 1000シリーズは筐体自体がきわめてコンパクトだ。従来製品は最大構成の8CPUを搭載するにはペディスタル型でほぼラック1本分の大きさだったが(PRIMEQUEST 580A)、最新のPRIMEQUESTはすべてラックマウント型になり、PRIMEQUEST 1800Eの場合、従来の3分の1の12Uまでスペースが削減されている。「パワフルだけど、小型」というのが新しい PRIMEQUESTの大きな特徴だ。さて、次回は実機を解体し、PRIMEQUESTの中身をより細かく見ていこう。
