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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第85回

サムスンからアップルまで、百花繚乱のARM系CPU

2011年01月24日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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携帯電話/タブレット向けのARMコアプロセッサーロードマップ

Marvell/Freescale/NVIDIA/アップルのARMコアプロセッサーロードマップ

MarvellのARMコアプロセッサー

 日本のコンシューマーには馴染みのない会社だが、Gigabit EthernetのPHYチップやSATAのコントローラーなどで知られる半導体メーカーが米Marvellだ。同社は昔からARMをベースにした製品を数多くリリースしており、特にSOHO向けのルーターやモデムなどでは、かなりの実績と製品ラインナップを誇る。さらに、インテルからARMコアプロセッサー「XScale」の資産と人員を買収し、これもラインナップに加えている。

 同社は独自にARM系CPUコアも開発しており、2005年には「Feroceon」という名の、Cortex-A8対抗(命令セットはARM v6)のコアを開発した。2008年にはこれを下敷きに、ARM v7命令セットをサポートした「Sheeva」というコアを開発、広く利用されるに至っている。

 このSheevaコアのCPUを搭載したSoCを使って作られたのが、コンセントに挿してそのまま使えるコンピューターというコンセプトに基づいた「Sheeva Plug」という製品だ。日本でも、玄人志向が少しだけスペックを変えて「KURO-SHEEVA」として発売しているので、ご存知の方もいるだろう。

 さてそのMarvellだが、インテルから買収したリソースの中には、「Manitoba」という開発コード名で知られた「PXA800」という携帯電話向けソリューションも含まれていたはずだった。ところが、もともと同社は携帯電話向けにはそれほど注力していないこともあってか、この方向はあっさり放棄。むしろXScaleを使ったアプリケーションプロセッサーのラインに注力している。

 Marvellは当初、インテルと同じ「PXA」という型番を使って、XScaleをそのまま提供していたが※1、やがて「Sheeva PJ1」コア(Feroceonを改称)を搭載した「ARMADA」シリーズに軸足を移し、最大2コアの「ARMADA 1000」をリリースする。
※1 厳密に言えば、途中でインテルによる製造からTSMCによる製造に切り替えたので、まったく同じというわけではない。

 これに続き、「Sheeva PJ4」(ARM v7互換)を搭載した「ARMADA 510/610」をリリース。現在のハイエンドは最大4コアの「Sheeva PJ4」(と思われるが明記されていない)を1.6GHzで動かす「ARMADA XP」となっている。

ARMADA 610の基本構成図

ARMADA 610の基本構成図

 ARM系で4コアという製品は、「ARM11MP」ベースではいくつか存在するが、ARM v7アーキテクチャー準拠の最終製品では、ARMADA XPが業界初である。もっとも同社の資料を読む限り、ARMADA XPはモバイル向けなどのアプリケーションプロセッサーというよりは、SOHO向けネットワーク機器などのコントローラー的な意味合いが強い。携帯機器向けのアプリケーションプロセッサーとしては、引き続きARMADA 510や同610を販売していくようだ。

FreescaleのARMコアプロセッサー

 Marvellと同じく、携帯電話機のチップセット市場をあきらめたのが米Freescale Semiconductorだ。LTE世代で本格再参入を狙っていた同社だが、「シェアが見込めない」ということで開発中の「MXCプラットフォーム」を破棄。以後は携帯電話の基地局向けソリューションに専念している。

 ただし、MXCと同じくARMコアを採用したプロセッサーを、民生機器用プラットフォーム向けに「i.MX」シリーズとして製品提供し続けている。ラインナップとしては、「ARM926」をベースとした「i.MX2x」シリーズ、続いて「ARM1136JF-S、同ZJF-S」をベースにした「i.MX3x」シリーズをリリース。最近では、Cortex-A8をベースにした「i.MX5x」(50/51/53)シリーズが主流である。

 なかでも「i.MX51」は、シャープのMID「NetWalker」に搭載されたことで少し知名度が上がっている。「Smartbook」(ARMコアのCPUを搭載するネットブック)という言葉が登場したとき、最初にリファレンスプラットフォームをリリースしたのも同社だった。この時にはSnapdragonも競合製品で出てきたが、先述の通りSnapdragonは携帯用のベースバンド機能まで搭載していることもあって、その分価格が高いという問題もあった。

i.MX515の基本構成図

i.MX515の基本構成図

 上の図は「i.MX515」という製品の構成図だが、ご覧の通り汎用のインターフェース類は搭載しているものの、特定の無線通信規格向けの機能などは持っていない(なにせWi-Fiすら標準搭載ではない)。その分安価であり、しかもOEMメーカーが自由に構成を選びやすいといったメリットもあったことで、広く採用されたようだ。

 Freescaleは2011年頭に、最大4コアのCortex-A9を搭載する「i.MX6」シリーズをアナウンスし、引き続きこのマーケットにフォーカスすることを明らかにしている。また、後述する「Windows for ARM」に関しては、同社セールス&マーケティング担当上級副社長のヘンリー・リチャード氏が、同社のブログ上で非常に興味深い発言をしているのも気になるところだ。

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