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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第44回

ライブメディア時代の音楽産業

迷走する音楽ビジネスに活路はあるか【後編】

2011年01月22日 12時00分更新

文● 四本淑三

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iTunesで曲だけ売りますというのでは、もう違う

―― じゃあ、キャプミラさんは去年バカ売れした(ことにする)として、今年以降の展望はどうですか?

キャプミラ 最終的な出力が変わってきているんだということを、具体的な形で示していかないと思っているんです。音楽を届けるのにiPhoneのアプリでもゲームでもいいんですよね。音だけじゃないパッケージングですね。同人のゲームを作って、そのサウンドトラックを音楽として届けてもいいんですよ。iTunesで曲だけ売りますというのでは、もう違うんじゃないかと思いますね。

―― そういうリッチコンテンツ側に振ろうというのはなぜ?

キャプミラ 音楽単体のパワーがなくなっているなと思いますね。特にiPhoneで聴いていると。

「音楽単体のパワーがなくなっている」(キャプミラさん)

古川 ニコニコ動画との違いを説明しづらいですよね。

―― キャプミラさんの話で、なんとなく「ビブリボンっていうゲームを思い出したんですけど。

Image from Amazon.co.jp
ビブリボン

ビブリボン : 1999年に七音社から発売されたプレイステーション用のリズムアクションゲーム。BGMに合わせてランダムにステージが変化するデザインで、BGM入りのゲームディスク自体も音楽CDとして再生可能。BGMはLaugh and Peace featuring 藤田陽子が担当。BGMに手持ちの音楽CDが使える「オコノミCD」モードもある。

キャプミラ ああ、ビブリボンの音楽は最高でしたからね。いまだに21世紀の音が出ていると思う。あそこら辺を突き詰めると、新しい音楽になるような気がする。

古川 音楽以外のところに展開を求めるってことは、音楽単体の力が弱っているのかしらん。

キャプミラ MP3でも、ちゃんとしたオーディオ装置の前に正座して、目をつむって聴くってことなら音にもパワーはあるんですが、今はそういう人もいないわけですよ。

村田 でも、もともと音楽って、失恋したときに聴いたものをいつまでも覚えているとか、その時の体験が大切なわけであって。いまあるスマートフォンも、2~3年くらいすれば古くなっていくのかも知れないし。これをいじりながら聴いたよねという、それが思い出として残るのであって。

キャプミラ 歴代のケータイを取っておく子もいますからね。そこだ!

村田 「思い出補正」ですよね。だから最初から思い出補正を付けるということですよね。AKB48なんかはそれで、投票といった行為があるわけじゃないですか。濃い少数のファンが支える市場ができている。我々の想い出を壊すなという。

―― でも最近、割と普通に聴かれてませんか、AKB48って。

キャプミラ 久々にメジャーの底力を見ましたよね、AKB48で。最初はしばらく空回りだったじゃないですか。企業が売っているだけで、実態がなくて。売ってるけど誰も聴いてないという状況が、ここ半年くらいでガラっと変わりましたよね。こないだ正月に実家に帰ったら、友達全員「AKB48がいい」っていう。田舎の30代がですよ。

古川 この状況下でモーニング娘。がまだ消えてないというのもすごい。メジャーがアイドル市場だというのは、すごく健全 なことだと思うんですよ。適材適所というか。

(次のページに続きます)

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