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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第44回

ライブメディア時代の音楽産業

迷走する音楽ビジネスに活路はあるか【後編】

2011年01月22日 12時00分更新

文● 四本淑三

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マーケティングが楽しくて音楽が進化していない

―― やっぱり売れるのはボーマス(CDのマーケットイベント)なんですか?

古川 ボーマスはお客さんの数がすごいですもんね。前に僕と歌い手のちびたが僕のボカロ曲を歌ったアルバムを出したことがあるんですが、それでもお客さん来てくれたんです。冷静に考えたらすごい話ですよね、ボーカロイドのイベントなのに。キャプミラさんと同じで、配信だったら多分跳ね返ってきてないと思うんですよ。

「(イベントと違って)配信だったらたぶん跳ねかえってきてないと思うんですよ」(古川さん)

―― ライブが終わったあとにCDが売れるというのは普通のことだけど、ライブもないのにCDが売れるというのはどう考えたらいいんですかね。

キャプミラ ボーマス自体がライブっぽくもあるよね。

村田 フェスだと思いますよ、フェス。

キャプミラ でも、とらのあな(同人系ショップ)では売れません?

古川 ああ、とらのあなは出ますね。あそこしかやってないんで他がわかんないですが。

キャプミラ あそこだけ根付いている感じがしますね。下手するとボーマスと同じくらい、少なく見てもその半分くらいは売れますよ。

古川 ネットの通販が機能しているからこそ、音楽活動を手の届く範囲でやりたい人は、「メジャー感っていう違いはあっても自分でもできるしどうなんだろう」と思うのかな?

とらのあな

―― なのにメジャーはいまだ、いいスタジオが使えます、いいミュージシャンが使えます、というアピールポイントしかない。

古川 いいスタジオ? いやLOGIC(DTMソフト)でもできるし……みたいな感じですかね?

村田 レーベルと一緒にやるにしても、すべてをネットで完結したいという人もいるわけです。ネットで知り合った人たちでパッケージを作りたいということですね。デザイナーや演者も知り合いで固めて。

―― レーベル側のリソースはいらないということですよね。ディレクションの入る余地も……。

古川 そういう方にはないですねー。それで成立するってすごくいい話だし。

村田 音楽的なところは特にないです、マジで。求められれば答えるけど、基本は企画屋だと思います。カネをかけるイコールすごいということではなくなってきたんですね。中田ヤスタカなんかがいい例ですよ。彼は自分のPCで曲を作って、マスタリングまでしてメジャーで売っている。それがウケている現状もある。

(レーベルが入る余地は)「ないです、マジで」(村田さん)

キャプミラ ただ、今はネットを使ってマーケティングから販売まで、全部一人でできちゃうじゃないですか。でもね、音楽自体を進化させる、っていうことをみんな忘れていると思うんですよ。

古川 おおおー!

キャプミラ それはメジャーも同じで、DTMで音楽制作が完結させられるようになって以降、新しい音は誰も作っていないんですよ。エレクトロニカ以降の音が出てきていない。

―― そういう肝心なことを忘れていると。

キャプミラ 個人でできるようになっちゃうと、マーケティング的な部分が楽しいんですよね。今まで何が売れたかを分析して作るのがすごく楽しい。

(次のページに続きます)

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