NHKの松本新会長は「まねきTV」訴訟を取り下げよ
他方、今年の家電ショーのCESでは「スマートTV」が話題だった。これは今までのインターネットTVを一歩進めて、タブレット端末のようなコンピュータからテレビの映像を見ることができるようにするもので、その代表が「Google TV」である。
アメリカではABC、NBC、FOXが共同で、すべてのテレビ番組をインターネットで見られる「hulu.com」というウェブサイトをつくった。BBCのiPlayerを初めとして世界のテレビ局がネット配信を開始し、ケーブルテレビの主力もサーバに番組を蓄積して視聴者が好きなときに見られるオンデマンド配信だ。これからテレビとネットの境界はなくなり、すべてのコンテンツがウェブサイトと同じようにいつでも見られるようになるだろう。
しかし今回の最高裁判決によって、日本でスマートTVのサービスをテレビ局以外の企業がやることは不可能になった。テレビ局のオンデマンド配信も「NHKオンデマンド」は月間40万アクセスと、私のブログにも劣る。民放に至っては番組のネット配信はほとんどやっていない。
利用者数百人のまねきTVを相手にテレビ局がそろって最高裁まで争ってネット配信を妨害するのは、地方民放を守るためだ。ほとんど独自番組を制作しないでキー局の番組を垂れ流しているだけの地方民放にとっては、キー局の番組がネットで流れてきては困るからだ。しかし地方民放の余命はわずかなものだ。今年7月のアナログ放送の終了以降は、各地で整理統合が始まるだろう。
世界のテレビの主流はもはや地上波ではなくネット配信だが、日本のインターネット放送は、テレビ局が「公衆再送信」を許さないためにビジネスとして成り立たない。テレビ局のネット事業も厳重な「著作権保護」で自縄自縛になり、採算が取れない。古いものを守るために新しいものをつぶし、結果としてどちらも失う愚かな工作をテレビ業界はいつまで続けるのだろうか。
NHKの新会長には、JR東海の松本正之副会長が就任する。彼は放送については「一視聴者」でしかないが、JRでは労働組合の反対を押し切って合理化を進めた「猛者」だといわれる。ぜひ松本新会長には、この愚かな訴訟を取り下げ、日本のスマートTVを推進する方針を掲げてほしいものだ。
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