このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

日立エンタープライズサーバーの生まれ故郷を訪ねる

緑豊かな秦野で日立のECOサーバーが生まれる

2011年01月31日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

機械と人手で効率的な検査を実現

 ハンダ付けが完了すると、次は基板の検査に移る。まずは機械によるハンダ付けの外観検査。カラーハイライト方式という方法で、基板の外観からハンダ付けをチェック。不良と認められる箇所はサーバーに登録され、モニタ上で赤くマーキングされるので、技能者はこれを見ながら、丁寧に修正を施していく。この作業は有資格者が行なっているという。

不良と認識されたところは赤い印が付き、サーバーに保存される

不良と認識された場合は、技能者がチェックし、修正を施す

 次は通電検査。電気抵抗値をチェックし、部品の破損やハンダ付けのショートまで摘出する。精密機器なだけにこうした作業は特に重要だ。

外観ではなく、X線を用いてハンダ付け等をチェックする装置。基板によってはこうした検査も必要だとか

 そして最後は単体での動作確認を行なう。CPUやメモリを搭載し、電源をオンオフしたり、コネクタ部の動作が正常かを調べる。このように何重にも渡って、検査が行なわれたのち、ようやく基板が完成する。

今では意外と行なわれていないというアルコールと純水による基板の洗浄。スーパーコンピュータでは洗浄は必須だという

ハンダ付けできないような部品は圧着を行なう。これは自社製のプレス機で、最大5トンまでの圧着が可能

 さて、実際のサーバーの組み立てで活躍するのが、同社の誇る電子組み立て作業システム「e-Assy」である。これは組み立て作業の指示を、写真を見ながら行なえるというもの。たとえば、ネジの種類や付ける位置が小型のタッチパネルモニタに映し出され、作業を終えると、次へ進める。作業の習熟や均質化に役立つという。

装置の組み立ては同社オリジナルの組み立て手順のガイドシステムである『e-Assy』を使う。モニタを見ながら、次にどの部品をどこにはめたらよいかが写真でわかる

 こうした組み上がった装置は、最終的な検査に入る。今回見せてもらったのは、温度を変えた状態で起動試験やテストプログラムを実行させるエージング試験である。

高温・低温環境下での動作を調べるエージング槽。透明なシートの向こうにサーバが設置されており、5℃で3時間程度、35℃で5時間程度のテストが行なわれているという(機種ごとに条件は異なる)

エージング槽の中にも入れてもらった。低温状態の環境でかなり寒かった

 過酷な検査を通過したあとは、いよいよ最終工程。ラックへの装置の組み込みや配線の作業はもちろん、OSのインストールまで工場で行なう。そして、ようやく出荷に至るわけだ。

出荷前には背面のケーブリング作業も施される。最近はケーブルの本数も相当減ったとか

最終検査・調整されるサーバー。出荷を待つサーバーラックが並ぶ姿は圧巻だ

 生産数が多く、顧客ごとのカスタマイズを行なわなければならない量産型のIAサーバーのみならず、エンタープライズサーバ事業部では高密度・大型基板のハイエンド系のサーバーも製造している。高い品質を実現するため着実に作業を進めているという印象が強かった。そして品質を確保するために、細かく繰り返しの作業が得意な機械と、微細な作業に強みを持つ人間の特徴をうまく組み合わせていた。

 やはり百聞は一見にしかず。巨大なプリント基板に次々と部品が取り付けられ、曼荼羅のような基板ができあがっていく様はまさに圧巻であった。また、よい意味で自動化され過ぎていなかったのも意外。「品質は人に依存する」というポリシーは、やはりサーバーのようなハイテクのものづくりでも同じなのだ。

ショールームに並んだ日立のサーバー群。エンタープライズ環境で高い信頼性を確保する

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ