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ASCII.technologiesベストセレクション 第2回

POWERプロセッサーとPower Systems、AIXの聖地

最先端の技術を生み出す米IBM研究所

2011年01月25日 09時00分更新

文● アスキードットテクノロジーズ編集部

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Linux on Powerとは?

Linux on Powerチーフアーキテクトのジェフリー・シェール(Jeffrey Scheel)氏

 米IBMロチェスター研究所のジェフリー・シェール氏は、Linux on Powerのチーフアーキテクトを務める人物だ。同氏から、Power Systemsで動くLinuxについて話を伺った。

 まず、なぜPOWERでLinuxなのか。これについてシェール氏は、「Linuxは、IBMのプラットフォームのすべてで動く。OSがすべてのデバイス、すべてのプラットフォームで動くことが重要」と前置きし、ビジネスの視点から価値が提供できるからだと強調した。

 IBMはこれまで、オープンソースコミュニティに多大な貢献をしてきた。「その結果、オープンソースへの貢献度は第3位となっている」(同氏)。特にカーネルに関して、同社は大きな貢献を果たしたという。「カーネルの問題を解決することは難しい。こうしたカーネルの問題は、実際にLinuxを使う企業でないと見つからない。そこで、IBMがこうした企業との橋渡し役となり、問題を解決していきたい」とのことだ

 また同氏は、Linux on Power はx86のLinuxにはない特徴を持っていると説明する。たとえば、DLPAR(Dynamic Logical Partitioning)やAMS(Active Memory Sharing)、マイクロパーティションなど、x86では実装されていない機能が使えることを強調した。

 DLPARは、仮想環境上の仮想マシンのCPUリソースやメモリを、負荷にあわせて動的に増減させるものだ。一方AMSは、メモリ領域をプール化し、仮想環境に必要に応じて動的にメモリを割り当てる機能である。これにより、メモリの利用効率が大きく向上する。そして、マイクロパーティショニングは、プロセッサーの処理能力を小数点単位で、個々の仮想環境に割り当てられる機能である。

 こうした機能は、かつてエンタープライズ向けのメインフレームやPower Systems上のAIXやIBM iで提供されてきたものだ。これをLinuxでも使えるようにしたのは、IBMだという。

米IBMロチェスター事業所にあるエグゼクティブブリーフィングセンター。事業所はすべて2階建てのブルーの特徴的な建物になっている

 さらに、エラーハンドリングについても、IBMが貢献している。たとえば、RASの付加価値としてEEH(Enhanced Error Handling)を追加した。これにより、I/Oの入出力中に起きるPCIバス上のエラーが検出可能となった。エラーがあった場合、ドライバーは再トライすることで処理を継続する。そして、Linux on Power のほとんどのドライバーは、EEHに対応しているという。

 そして特筆すべきは、Linux on Power が実現するスケーラビリティだ。同氏によると、Linux on Powerは256コア1024スレッドの環境までスケールするという

 最後に、Linux on PowerがAIXに追いつかなければならない点があるとすれば、それはどこかという点について聞いてみた。同氏は、Linux on Powerはエンタープライズに必要な多くの機能を追加してきたと強調する。たとえば、マイクロパーティショニングやメモリとCPU、I/Oの動的配分を実現するDLPAR、仮想イーサーネットやSCSI、仮想LAN、VIOSサポートなど、エンタープライズシステムに求められる多くの機能は実装済みだという。

 「だが、確かにいくつかの機能については、AIXに追いついていない」(同氏)。たとえばPOWER7で追加された、メモリ上のデータを圧縮することで、利用できるメモリ領域を拡張するActive Memory Expansion(AME)や、稼働中のアプリケーションをほかの仮想マシン(WPAR:Workload Partition)に移動させるアプリケーションモビリティといったものは、まだ搭載されていないという。しかし、どちらも近い将来に実現されると同氏は断言する。

 そして、1つのプラットフォームの上でLinux、AIX、IBM iという3つのOSが動くことが重要であると強調する。「OSを選ぶのではなく、ワークロードが重要だ」というわけだ。同氏は、IBMは今後もLinuxの進化に大きく貢献していくと締めくくった。

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 LinuxとAIXという、2つのPOSIX対応OSに注力するIBM。これら2つのOSと、競合他社のOSが互いに切磋琢磨しながら進化していく姿は今後も目を離せない。

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