「黒船」の影響で
専用端末向けの配信も花開く?
ケータイを中心に、日本独自の進化を遂げてきた電子書籍。それがあらためて話題となった大きな要因は、やはり米国の影響が考えられるだろう。
発端は2007年11月、米国でAmazon.comが発売した「Kindle」だ。携帯電話のネットワークで電子書籍が買えるという便利さがヒットを生んだ。Amazon.comは販売台数を公表していないが、2010年にシリーズ累計で販売台数が1000万台を超えたという関係者の証言もある(ブルームバーグ調査)。
そのアマゾンに追従すべく、2009年には米ソニーが3Gネットワーク対応の「Reader」、大手書店のバーンズ&ノーブルが3G/無線LANを利用できる「Nook」を発売した。
いずれも画面にはモノクロのE-Inkを採用し、バックライトなしで画面のぎらつきが少なく、文字をすっきりと表示してくれる。端末から直接ストアにつないで電子書籍を買えるという点もKindleと同じだ。
タブレット端末の流行も電子書籍の盛り上がりを加速した。代表格は、何と言ってもやはりiPadだろう。こちらはカラーで、画面のタッチで直感的に操作できる。アップル自身もiPadから直接本を買える「iBookstore」を展開している。
こうした海外メーカーの端末は、2009年頃から徐々に日本にも入ってきている。2009年10月には、米国版Kindleが日本のAmazon.co.jpから買えるようになり、日本語が読めるようにハックする人まで登場したほどだ。
また2009年は、書籍をスキャンしてデータベース化する「Googleブック検索」(Googleブックス)が話題になったことも忘れてはならない。こうした「黒船」の襲来を受け、日本の出版社もケータイだけではなく、専用端末に再び力を入れるようになったのだ。
外からの刺激だけでなく、ネットワークインフラの進化も電子書籍に追い風となっている。ΣBookやLIBRIeといった電子書籍端末が登場した2004年当時に比べると、携帯電話の3Gネットワークも高速化し、公衆無線LANを使える場所も増えた。出先で快適にコンテンツを買えるという状況が整ってきたのだ。
人々のデジタルコンテンツに対する意識も変わっている。インターネット元年から15年、パソコンやケータイでネットを使ってきたことで、ディスプレーで文字を読むのに抵抗のない人々が増えてきた。無形のデジタルコンテンツにお金を払うという抵抗感も減っている。携帯電話やiTunes Storeなど、カタログが豊富で、購入手順を簡単にしたストアさえ用意すればユーザーは買ってくれる状況が出てきた。
(次ページに続く)

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