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電子書籍を選ぶ前に知っておきたい5つのこと 第1回

これだけは知っておけ!日本の電子書籍事情

2011年01月24日 12時00分更新

文● 広田稔

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ケータイが火をつけた出版業界

 そんな日本の電子書籍を牽引してきたのは、実は「ケータイ」だった。

 KDDIは2003年に「EZブック」を開始、2005年にはポータルサイトの運営も開始した。2006年には制作体制を整え、ケータイ向け漫画の配信を本格化している。

 公式発表によれば、売上は年間で約24億円。一方のNTTドコモは、iモードにおける電子書籍の売り上げを年間で約43億円と発表していた(数字はいずれも2006年時点)。どちらも目ざましい成長分野として注目を集めた。

 インターネットメディア総合研究所の発表によれば、2009年の電子書籍市場規模は574億円。このうち89%の513億円がケータイ向けだった。また、総務省の資料では、2009年時点におけるモバイル向け電子書籍市場はおよそ500億円とされている。

総務省調査による。青がケータイ市場全体、赤が電子書籍市場

Image from Amazon.co.jp
いちご水

 ケータイ市場はいわゆる「ケータイ小説」という形で、デジタルコンテンツの出版という社会現象も生んだ。

 2002年、スターツ出版が販売した「Deep Love」をきっかけに大ブームが起きる。ケータイ向けの無料ウェブページ作成サイト「魔法のiらんど」で小説投稿が相次ぎ、「恋空」「この涙が枯れるまで」といった作品が次々書籍化された。

 刊行点数は30冊を超え、累計販売部数は500万部を超えた。斜陽産業と呼ばれた出版業界にとって、このインパクトはあまりにも大きいものだった。


20年間の歴史がある
日本の「電子書籍」市場

 だが日本の電子書籍の時代は「ケータイ」で始まったわけではない。それよりはるか以前から、およそ20年以上にわたって出版社とIT業界がせめぎ合った歴史があるのだ。

 古くは80年代末から90年代にかけて流行したマルチメディアCD-ROMが思い起こされる。今でこそウェブページで当たり前に触れているが、当時、文章中に動画や音声が含まれているのは、紙の枠組みを超えた新しい表現手段のひとつだった。

 90年代に入るとPC向けに電子書籍を販売する仕組みが整ってくる。1992年には、米国本社とのジョイントベンチャー・ボイジャーが設立した。その3年後には、富士通の社外ベンチャー制度を利用し、フジオンラインシステム(現パピレス)が起業し、パソコン通信上で「電子書店パピレス」をスタートさせている。

電子書店パピレス(現在)

 Windows 95が発売され、日本でインターネットが本格的に普及し始めると、パソコン上で文字を読むというスタイルが一般人にも広まっていく。

 そしてその3年後、150社を超える出版社と家電メーカーが集まって「電子書籍コンソーシアム」を旗揚げ。1999年に衛星通信を使って電子書籍を配信する「ブック・オン・デマンドシステム」の総合実証実験を始めた(関連記事)。

 これがひとつの契機になり、ITバブルのあおりやブロードバンドの登場もあって、電子書籍事業に火がついたのだ。

1999年の電子書籍リーダー

 1999年、シャープはPDA「ザウルス」用の小説を配信する「ザウルス文庫」(現スペースタウンブックス)をスタート。同年には凸版印刷などが共同でPC向けのデジタルコンテンツ配信「ビットウェイ」を開始した。

 さらに2000年代に入ると、イーブック イニシアティブ ジャパンが「eBookJapan」を、角川書店や講談社など、出版大手8社が集まった日本電子書籍出版社協会が「電子書籍文庫パブリ」をそれぞれ立ち上げてきた。

 デバイスという意味では、2004年に松下電器産業(現パナソニック)から「ΣBook」、ソニーから「LIBRIé」というモノクロの電子書籍端末が登場。2006年には、カラーの「Words Gear」(パナソニック)も発売された。



(次ページに続く)



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