ここ数年、IT業界で大きな動きを見せている電子書籍。
数百冊の本を1台のデジタル機器にためておき、いつでも好きなときに書籍や雑誌、新聞、コミックなどを読める。深夜でもネットからアクセスして気になった本を即ダウンロード購入できる。ちょっと先の未来に思えていたそんな生活が当たり前になったのだ。
ASCII.jpでは、そんな電子書籍の最新動向をまとめた特集を全5回に渡ってお届けする。初回は、現在に至るまでの経緯とこれからの動きを簡単にまとめたい。2回目以降は、読書端末、フォーマット、ケータイキャリア、ストアについてそれぞれ掘り下げていく。
すでに始まっている「電子書籍元年」
iPadのデビューで始まった2010年は、「電子書籍元年」と呼ばれた年だった。
昨年時点で、その市場規模は約670億円(矢野経済研究所)。2011年度には720億円に成長すると予測されている。「売れない」「儲からない」と言われ続け、1996年以来、減収が続いていた出版市場にとって、規模は小さいながら、その成長率は驚異的なものだった。
野村総合研究所が12月に発表した「2015年度までのIT主要市場の規模とトレンド」によれば、その市場規模は2015年には2400億円に達する見込みという。
市場の動きに合わせるように、ユーザーの関心も非常に高まっている。
アスキー総合研究所が昨年11月に実施した調査では、調査対象となった約7500人のうち48%が電子書籍に興味を持っていた。さらに10%が電子書籍・コミックを「現在利用している」と回答、38%が「今後利用するかもしれない」と答えるなど、市場の関心の高まりをうかがわせる調査結果となった(右図)。
作家たちもその流れに敏感に反応し、小説家・村上龍氏は電子書籍を発行する新会社「G2010」を11月に設立、第一作「歌うクジラ」は1万5000ダウンロードを超えた。漫画家・赤松健氏は12月、絶版コミックに広告を入れて無料配信する「Jコミ」をスタート。ダウンロード総数は200万件を超えている。
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