なぜレコード会社が存在するのか不思議だった
―― それ以降、音楽制作が個人でも可能になり、レーベルの機能も徐々に個人側に移ってくる……という過程を生で見てきたと思うんですが、業界側にいてそれはどう感じましたか?
村田 僕は元から言っているんですけど、僕はこの業界に入ってからずっと、なぜレコード会社が存在するのか不思議でしょうがなかった。それは最初から疑問だったから。
―― それはどんな理由ですか?
村田 muzie時代に、ある程度業界の仕組みを知ったわけですけど、その時に自分で調べたら自分でやれる方法が見つかるわけですよね。
―― ネットのない時代は、まずそこがベールに包まれていたわけですよね。
村田 それを知ってしまえば、なぜそこにレーベルが必要になるのかという話になると思うんです。
―― とはいえレーベルの機能としては、プロモーションのような個人ではできないものもあるわけですが。
村田 ただ、メジャーでも売れている人はそれなりにいるけど、まったく売れなくてつぶれていく新人なんて昔に比べたらよっぽど多いわけですよね。
―― 新人にかけられる予算はない。
村田 だったら(予算は)売れるタイトルに集中しますよね、ということです。いまコンテンツ業界はどこも自転車操業で、漫画も映画もゲームも大変なわけじゃないですか。出版も同じだと思うんですけど。
―― はい。音楽産業の迷走と衰退の歴史を再現しそうな勢いですね。
村田 昔、ビジュアル系が人気だった頃は、ライブハウスで始めて1年くらいのバンドでもメジャーに行けたりした。ライトノベルが売れていたのも、ああいうパッケージにすれば……という方法がわかったから、そこに乗った作品がたくさん出てきた。
―― 売れる手法が見つかると、同じ方法で再生産を繰り返し、結果として一度ふくらんだ市場がじわじわ縮小していくと。
村田 それはどこも同じ構造だと思うんですけど、そこから抜け出したくても、抜け出せずにいるんじゃないか。
―― LOiDはそこから抜け出す方法を模索しているように見えましたが。
村田 CDという「盤」を扱っている以上、難しいですね。音楽がデータとして扱われる点では同じことです。ライブビジネスが注目されているとはいえ……。個人のイベンターが増えても、ネットで人気のあるコンテンツは限られていて、そこに集中してしまう。すると、イベンターが違っても出てくるものは同じで、あまり意味がない。それはどこの業界でも同じだと思います。
古川 ここまでが「2010年絶望編」?
村田 はい、僕が絶望して終了しました。終わり。
―― じゃあ、この後は2011年に向けての「希望編」に移りましょう。ではキャプミラさんよろしくお願いします。
キャプミラ まず僕は去年、iTunesで自分名義のソロ楽曲を配信したんですが、あれがメチャクチャ売れたことにしません?
村田 ぎゃはははは!
古川 なんだそれ、売れたことにするって!
―― えー、今の話はそのまま使いますから! また来週!
(後編に続きます)
著者紹介――四本淑三
1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。
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