設立のタイミングはムチャクチャ悪かった
―― じゃあ、いかにきついかったか、という話を伺いましょう。まずLOiDを始めるまでの話をお願いできますか。
村田 muzieという音楽配信サイトでバイトをしていたのが始めです。そのmuzieに、NTTスマートコネクトとエイベックス・マーケティングが出資するという形で設立されたのがハッチ・エンタテインメントだったんですけど。
―― 母体がmuzieだったということですね。
村田 運営に関わっていた人はみなmuzieの人たちでした。そもそもmuzieからメジャーアーティストを出す、というコンセプトだったみたいです。
―― ハッチの設立は、ネット系のミュージシャンがニコニコ動画の方に移り始める微妙な時期でしたよね。
村田 だからタイミングはムチャクチャ悪かったですね。自分でも「歌ってみた」を上げたりしてた頃だったんですが。
―― えっ! それ、今でも見られるんですか?
村田 さすがに非公開ですよ! その頃はまだ、自分で録って編集もしてないようなものもいっぱいあったので、今みたいに映像のクオリティがものすごく高くなってしまうと、あまりにも恥ずかしくて……。
―― 2007年の夏というと、「初音ミク」が発売された時期でもありますよね。そこはまだ視野に入っていなかったんですか?
村田 ハッチを始めた頃にちょうど出てきたんですね。エンジニアの人から初音ミクというのが出た、という話を聞きまして。
―― その後LOiDレーベルとしてアルバムが出るわけですが、これは当然VOCALOIDを意識したネーミングですよね?
村田 VOCALOID文化が2~3年経ったら落ち着くだろうと、そのときに文化を圧縮したレーベルがあったらいいよね、というのがひとつです。そしてもうひとつは、そこを超えていこうと。両方の意味があったんです。
―― でも最初からVOCALOIDを使ったタイトルは出してませんよね?
村田 最初にcosMoくんと歌い手さんのアルバムを出したときは、Amazonのコメント欄がものすごかったんですよ。人間に歌わせるなんて何なんだ! という調子で、当時はまっぷたつに割れてました。
―― むしろ否定派のほうが多かったような。
村田 ですね。今は今は歌ってみたのほうが主流になってきて「人が歌ってこそ」という人もいるし。だから何があるか分からないです。
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