このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

松村太郎の“モバイル・ネイティブ”時代の誕生を見る 第13回

2011年にモバイルネイティブになろう

2011年01月12日 16時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

モバイルとクラウドというキーワード

 iPadを仕事の道具として活用する際に、最も気に入っているアプリが「OmniFocus」である。4200円とちょっと値は張るアプリだが、タスク管理を「プロジェクト」「アクション」「コンテクスト」という3つの視点で管理する事ができる点で非常に安心して仕事に取り組むことができるアプリとなっている。Mac版/iPhone版も登場しているが、インターフェースはiPad版が最も良い。タブレットは、アプリのUIをより心地よく、効率的なモノへと変えるきっかけを作ってくれていると思う。

OmniFocus for iPad。Mac版、iPhone版とクラウドを介してデータの共有が可能だが、iPad版が最も使いやすい

 このOmniFocusはiPadだけで使うよりも、Mac版/iPhone版と組み合わせるとさらに便利だ。MobileMeやWebDAVサーバ、あるいはβ版のOmniSyncを利用する事で、どのデバイスで開いても1つのデータベースへアクセスし、同期することができる。簡単にプロジェクト・アクション管理をクラウド化してくれるのだ。

 出先でぱっと思いついたアクションはiPhoneから、打ち合わせ中に発生したアクションはiPadから、そして自分のプロジェクトを組み立てていく作業はMacからじっくり、と1つの作業をさまざまなデバイスから、シチュエーションに合わせて使い分けることによって、より快適に目的を果たすことができる。

 気がつけば、メールはGmail、メモはEvernote、ファイルはDropboxやSugarSyncといったように、我々が普段使っているデータの多くはクラウド上に置かれるようになった。さすがにiTunesなどの音楽ファイルはストレージの大きなパソコンにしかないが、年間約2500円を払えば写真も無制限にFlickrの上に載せることができる。BlogもTwitterもFacebookも、ウェブブラウザーから直接書き込むため、むしろ手元にデータなど残っていないぐらいだ。

DropboxやSugarSyncなどのクラウドストレージはモバイルデバイスの枠を越えて、ファイルにアクセスできる。画面はiPad版Dropbox

 それまでパソコンとスマートフォンの2つだった場合は、どうしてもパソコンがメイン環境で、スマートフォンはサブ的な存在として見ていたと思う。しかしタブレットが入ってきたことによって、「場所」と「作業」に応じて適切なデバイスを「選択」するように移行してきた。そしてデータのアクセス先はクラウドやウェブサービスであり、持ち運ぶ(=壊れる、なくすリスクをはらむ)デバイスによる情報管理の方法を選ぶのだ。

EvernoteはiPhoneでもiPadでも、直接ノートを編集したり、新しいノートが作れるため、原稿を書いたり打ち合わせのメモを取るのにピッタリだ

ノマド、またの名をモバイルネイティブ

 2009年以降、「ノマド」「ノマドワーク」というキーワードが新たなワークスタイルとして注目された。そして2010年を経て、2011年にこのキーワードは、ワークスタイルではなく“生き方”として概念化されたり、実際にライフスタイルとして採用する動きがより大きくなってくる。これは前述のモバイルとクラウドの環境と最適化が進んだ結果であり、動くこと、動けることが特徴であるノマドこそ、モバイルネイティブの1つの姿であると考えている。

 本連載を始めたときのモバイルネイティブは、「デジタルネイティブ」のような世代的な概念というだけではなく、後天的に獲得するライフスタイルの両方を示す言葉であると紹介している。デジタルネイティブはしばしば“彼らは自分たちと違う”“彼らを理解しよう”と上の世代との違いを際立たせて扱われることが多く、結果的にコミュニケーションの断絶を強調する結果になってしまっている。

 モバイルネイティブは、“モバイル”そのものが元々携帯電話などのコミュニケーションに由来していることから、世代やライフスタイルを超えて理解し合ったり、コミュニケーションを取り合える「スキル」や「感覚」を示す言葉として、育てていきたいと考えている。デバイスの選択、情報管理などの手法について掘り下げて、何が最適なのかを示していきたい。

 最後になりましたが、本年もおつきあいのほど、よろしくお願いします。


筆者紹介──松村太郎


ジャーナリスト・企画・選曲。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。嘉悦大学、ビジネスブレイクスルー大学でも教鞭をとる。テクノロジーとライフスタイルの関係を探求。モバイル、ソーシャルラーニング、サステイナビリティ、ノマドがテーマ。スマートフォンに特化した活動型メディアAppetizer.jp編集長。自身のウェブサイトはTAROSITE.NET


前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン