デノン本社試聴室で、中核機種「AVR-4311」を聴く
AirPlayで広がる、AVアンプの可能性 (2/3)
2011年01月08日 09時00分更新
AirPlayという選択肢
AVR-4311は9.2ch出力に対応したAVアンプ(ステレオパワーアンプの追加で11.2chにも対応)で、価格は25万2000円。ラインアップ的には、プリとパワーを分割した「AVP-A1HD」「POA-A1HD」(いずれも73万5000円)、一体型の「AVC-A1HD」(59万8500円)といったフラッグシップ機に次ぐ、同社の中核モデルという位置付けだ。
すでにAVアンプの分野では当たり前となりつつある有線LAN(DLNA 1.5/インターネットラジオ機能/Windows Media Connect)やUSB(PC/USBストレージ/iPodデジタル接続に対応)は当然のように装備するが、もうひとつ注目したい機能がある。
それが有償アップグレード(5250円)で提供される「AirPlay」である(購入サイト)。
AirPlayは、無線/有線LAN経由でiTunes(またはiPhoneなどiOS4.2搭載モデル)から動画/静止画/音楽データおよび曲名などのメタデータをストリーミング配信できる機能である。アップルのライセンスに基づくクロージングな規格だが、携帯音楽プレーヤー市場においてiPodやiTunesは依然強い存在感を持っている。デノンは同技術への対応を表明した最初の5社(ほかにマランツ、JBL、B&Wなど)の一角に加わった形。特にAVアンプの分野でAirPlayが果たす役割と意義は大きいと思う。
デノンは既存製品のAVR-4311/3311/A100用に有償アップグレードキットを1月6日から販売している。発表後延期の状態となる期間が長かったため、発売を待ち望んできたユーザーもいるに違いない。
さて、以前からAVアンプのネットワーク対応に関しては積極的に取り組んできたデノン(関連記事)だが、それはAVアンプの進化において、コネクティビティー(さまざまな機器と容易に接続できること)の向上は極めて重要な要素と考えたためだった。
デノンコンシューマー マーケティング営業本部商品開発部主幹 川北裕司氏は「進歩の過程の中で管理と言えば、iTunesという話が当然のように出てきました。今回iPhone、iPad、iPod touchなどと連携する機能が強化されたことで、より手軽にネットワークの利便性を実感できるようになります」と話す。
家庭内LAN上でのストリーミング再生という意味でDLNAと共通点もあるAirPlayだが、楽曲管理にすでに圧倒的に普及したiTunesや音楽プレーヤーとして高い人気を誇るiPodと連携できると言う点はやはり大きな武器となるのだろう。
AirPlayを使った再生方法としては現状2種類の方法がある。もっとも手軽なのは、iOS4.2デバイスに保存した楽曲データをそのまま転送するダイレクトストリーミングという方法だ。
使い方はiPhoneなどで音楽を再生している際に、音声の出力先をAVR-4311に換えるだけと非常に簡単だ。iPhone/iPod touchの中に保存した音楽データをデジタルのまま取り出すことは、これまでもUSB経由でできたが、ワイヤレスになることで使い勝手は別次元といっていいほど良くなる。
「操作感は非常にシンプルです。今までヘッドホンで聴いていた楽曲の出力先を切り替えるだけで、スピーカーから音が出る。非常に直感的なもので、ネットワークオーディオの間口を広げてくれると考えています」と川北氏も話す。
またiTunesをインストールしたパソコンを使う方法もある。アップデートが済んだAVR-4311をネットワークにつなぐと、iTunesのリモートスピーカーとして選択できるようになる。これを選ぶと、AVR-4311側が自動的にAirPlayモードに切り替わるので、あとはパソコンのiTunes上で再生したい曲を選ぶだけでいい。
選曲操作のためにいちいちパソコンに向かいたくないと言う場合には、AppStoreでアップル純正の「Remote」というソフトを入手し、iOS4.2デバイス(iPad、iPhone、iPod touchなど)にインストールするといい。これを使えば、無線LAN経由で別室や離れた場所に置いたパソコンを操作できる。
また、簡易的な選曲機能で済むならAVR-4311側の操作でも完結する。テレビなどを接続した環境であれば、再生中のプレイリストやアルバム内の楽曲に限られるが、AVR-4311のGUI画面上から再生/一時停止、スキップなどが行える(アルバムアートの表示も可能)。
さらにデノンはAppStoreで「Denon Remote App」という専用のリモコンソフトを無償配布しているので、これをiPhoneなどにインストールすれば付属リモコンではなく、iPhoneのタッチ操作でAVR-4311の操作(音量調整やメニュー選択、ソース切り替えなど)が可能になる。合わせて使うといいだろう。
iTunesのリモートスピーカーとして使用する方法は、PCやMacを常に起動しておかないといけない点が難点だが、既存のミュージックライブラリーを意識せず、そのまま活用できるのは利点だ。同種の内容はWindows Media Player 12や、PC上にTwonky MediaなどのDLNAサーバーソフトをインストールすることでも実現可能だが、すでにiTunesを導入済みの環境であればソフトの追加インストールが必要なく、手持ちのiPhoneをリモコン代わりに活用できると言う点は非常に便利である。
音質面では、高音質ネットワーク配信で取得したFLAC音源(24bit/96kHz)などをDLNA経由で再生する方式に一歩譲る面はあるが、利便性の高さはそれを補って余りあるものがある。もっともこのあたりは「手軽さ」か「音質か」で適時選択していけばいい部分だし、両方に対応できる懐の深さがAVR-4311にはあるのだが。
この連載の記事
-
Audio & Visual
第7回 DYNAUDIO Confidence C1 Signatureを聴く -
Audio & Visual
第6回 LUXMAN試聴室で、ハイレゾと真空管、両極端のサウンドを体験 -
Audio & Visual
第5回 AirPlayで広がる、AVアンプの可能性 -
Audio & Visual
第4回 NP-S2000が切り拓く、高音質再生の地平 -
Audio & Visual
第3回 Hi-FiソースとしてのiPodを改めて体験する -
Audio & Visual
第2回 Hi-Fiとゼネラルの懸け橋──MAJIK DS-Iを聴く -
Audio & Visual
第1回 伝統のJBLを、総額ウン千万円のシステムで聴く -
AV
第回 こだわり機器を聞く、最上の試聴室めぐり - この連載の一覧へ