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あなたの知らないWindows 第43回

GPUを利用できる仮想化ソフト XenClient 実践編

2011年01月06日 12時00分更新

文● 山本雅史

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別の仮想OSのアプリケーションを共有する

 XenClientでは、複数の仮想OSを画面に同時表示できない。そのため、表示していない仮想OS上のアプリケーションを、画面を占有中のOSに表示するために「PortICA」という機能が用意されている。PortICAは、いわば仮想OS上のアプリケーションのウインドウだけを、リモートデスクトップで表示する技術だ。

 例えば、IEは本来、ひとつのOS環境に1種類しかインストールできないし、Windows 7ではIE6は動かない。だがPortICA機能により、IE9とIE6を同じ画面で使用できる。

 PortICA機能は、アプリケーションを提供する側(Publish側)と利用する側(Subscriber側)をきちんと決める必要がある。今回のテストでは、Windows XPをPublish側、Windows 7をSubscriber側に設定してみる。

 まず、Windows XP側のXC-Tools仮想ドライブにある、「SecureApplicationSharing」フォルダーのセットアッププログラムを起動する。セットアッププログラムでは「Publish Applications」にチェックを入れて、インストールを開始する。

「Publish Applications」をインストール

Windows XPはアプリケーションを提供する側なので、「Publish Applications」をインストール

 次に、XenClientの管理コンソールに移動してWindows XPを選び、詳細表示モードからExperimentalタブを選択して、「Publish Applications」を「Enable」にする。

「Publish Applications」を「Enable」に

管理コンソールの詳細表示ビューからExperimentタブを選択。「Publish Applications」を「Enable」に

 Windows 7でも同じようにセットアッププログラムを起動し、今度は「Subscribe to Applications」をチェックしてインストールする。続いて、もう一度XenClientの管理コンソールに移動して、今度はWindows 7のExperimentalタブで、「Subscribe Applications」を「Enable」にする。

「Subscribe to Applications」を選択

Windows 7はWindows XPのアプリケーションを利用する側なので、「Subscribe to Applications」を選択

 これらの手順により、Windows 7上でWindows XPのアプリケーションを使用する準備が整った。実際にアプリケーションを使うには、まずはWindows 7とWindows XPを両方とも起動しておく。すると、Windows 7側で「Dazzle」というアプリケーションが表示される。

Dazzle

Windows 7を起動すると、「Dazzle」というアプリケーションが起動される

 DazzleにはWindows XPにインストールされているアプリケーションが表示される。そこでアプリケーションを選んで「Add」ボタンを押せば、Windows 7からWindows XPのアプリケーションが利用できるようになる。

Windows XPにインストールされているアプリケーションが一覧表示される

Windows XPにインストールされているアプリケーションが一覧表示される

 Dazzleで追加したWinodws XPのアプリケーションは、Windows 7側スタートメニューの「Dazzle Apps」の下に追加されている。これをクリックすると、ウインドウ内にWindows XPのログオン画面が表示され、ユーザー名とパスワードを入力すればそのアプリケーションが表示される。

「Dazzle Apps」にIE6が追加される

IE6をAddすると、スタートメニューの「Dazzle Apps」にIE6が追加される

Windows XPのログオン画面が表示される

追加されたアプリケーションを起動する際に、Windows XPのログオン画面が表示される

IE9とIE6を並べて表示してみた

IE9(左)とIE6を並べて表示してみた。IE9はWindows 7で動作しているが、IE6はWindows XPで動作し、画面だけをWindows 7に転送している

 PortICA機能は、Windows XPのアプリケーションウインドウだけを、リモートデスクトップのテクノロジーを使ってWindows 7側に画面転送している。そのためIMEについては、Windows 7上のアプリケーションはWindows 7のIMEを使えるが、Windows XPのアプリケーションはXP側のIMEを使うことになる。

 PortICA機能をうまく使えば、IE同様にバージョンの異なるOfficeをひとつの画面で利用できる。また、Windows 7では動作しないWindows XP対応のゲームを、Windows 7上で動かすといったことも可能だ。

XenClientはパソコンの未来の姿か

 現在のXenClient 1.0は、サポートするハードウェアが制限されているため、動作するパソコンの種類が少ない。しかしXenClientは、パソコンの未来を見せているように思う。

 1台のパソコンでWindows 7とWindows XPを自由に行き来できるので、古いOS環境をそのまま保持しておいて、新しいOSを利用するというのが、現実的になる。また新しいパソコンを購入しても、古いパソコンから仮想OSをファイルでコピーするだけで、パソコン環境の引っ越しが簡単に行なえる。

 将来的には、ゲームだけを動かす仮想OSがリリースされるかもしれない。例えばゲームソフトにOSを含んでいれば、そのゲームだけを動かす環境ができあがる。これならゲームだけしか動かさないので、ほかのアプリケーションの干渉を排除できるし、動作の安定性も増すだろう。

 マイクロソフトも次世代のWindows 8では、クライアントOSに仮想化機能を搭載する計画があるようだ。古いOSと新しいOSが同じパソコンで同時に動けば、新旧OSの互換性維持という後ろ向きの労力を、革新的な技術開発に振り向けることもできるだろう。

 クライアントパソコンの仮想化は、パソコンの新しい時代を切り開くターニングポイントになるかもしれない。

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