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末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第18回

NTTドコモやVerizonのスタートでLTEが本格化する2011年

2010年12月28日 12時00分更新

文● 末岡洋子

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アメリカでは“4G”の売り文句で
WiMAXと価格競争を早くも開始

 より市場が大きなアメリカではVerizon Wirelssが12月5日にスタートした。実はアメリカでは先行してMetroPCSが提供しているものの、アメリカ最大のキャリアによるものだけあって、大きく報じられた。

 スマートフォンが活況を呈しているアメリカでは、LTEのライバルといわれるWiMAXも活発で、早くも価格競争がスタートしている模様だ。VerizonのLTEサービスプランは、上限5GBまで50ドル、同10GBまで80ドル(ともに月額)の2種類を用意、これは競合するWiMAXキャリアのSprint Nextelはもちろん、自社の既存3Gサービスよりも割安となる。

 世界で注目されていたVerizonとNTTドコモが今月、予定どおりにLTEを開始したことで、2011年はLTEが本格的に助走に入りそうな機運となってきた。だが3Gで、テレコムバブル崩壊を招いた苦い経験を持つヨーロッパのオペレータは、慎重な姿勢を崩さないと予想されている。

 イギリスのJuniper Researchが12月15日に発表したレポートでは、LTEは2011年に本格化し、2015年のLTEサービス市場は2000億ドルを越えると予想している。主要市場は、米国、日本、発展途上国で、ハイエンドおよびビジネスユーザーが中心。一般消費者からの売り上げは半分に満たないという予想だ。

 さて、LTEが興味深いのは、伝送速度やサービスだけでなく、標準の対立という歴史からみた同規格の役割だ。LTEはGSM/W-CDMA系統の延長線上にあるが、Verizonのほか、KDDIやChina TelecomといったCDMA陣営のオペレーターやキャリアもLTEを採用したからだ。VerizonやKDDIは2010年2月、GSMオペレーターが中心の業界団体GSM Association(GSMA)にも加入している。

 CDMA陣営がGSM/W-CDMA側に入ることにより、モバイルの標準はGSMとWiMAX(Intelが率いており、WiMAX Forumが推進団体)の2つに集約できる。だが、そのWiMAXのアメリカ外の代表選手、Yota(ロシア)は先にLTEに転向することを発表しており、WiMAX陣営にとって打撃となった。

本来の“4G”の定義からは外れた、現行のWiMAXとLTEがマーケティング的な理由から4Gと名乗り始めたことで、なし崩し的に4G合戦が生じている

 LTE対WiMAXでは(特にアメリカで)“4G”としてマーケティング合戦が激しい。だが、国際電気通信連合(ITU)は4G(「IMT-Advanced」)をフルIPベース、伝送速度は高速移動中(車や電車など)は最大100Mbps、低速移動中(歩行中など)は1Gbpsなどと定めており、現世代のWiMAXとLTEはともに条件を満たしていないことになる。

 しかし現実にはWiMAX陣営が4Gと名乗り、その対抗であるLTEの事業者側も4Gと名乗るようになってしまったことから、ついにITUも12月初めにWiMAXやLTEを4Gと呼ぶことを認める旨を発表した。ますます混乱する気がするが、これほど“4G合戦”が過熱してしまったあとで、今更正確さを求めるのは難しかったのだろうか。

 スマートフォン、タブレットなどの端末と、その上のアプリに注目が集まった2011年のモバイル業界、2011年は久しぶりに速度の話が表に出てくる年になるかもしれない。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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