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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」第42回

カラオケでボカロPにも著作権使用料が

「作家が主役」の時代――JASRAC・部分信託で何が変わる?

2010年12月25日 12時00分更新

文● 四本淑三

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作家個人が音楽出版社を選べる時代

―― エクシング側に作家から打診が来たときには、どう対応していますか?

小林 直接会える方でしたら、直接説明いたしますし、どうしても会えない場合は、口頭だけでもということで、電話でお話させていただきます。説明会も定期的に開いていきたいと思っています。地方でもニーズがあれば。

―― ただニーズがあったとしても、無制限に作家を受け入れるわけにもいかないわけですよね。

小林 そこはこれから精査していかなければならないですね。手数料のほうが多くて、事業として成り立たないと意味がないので……。

―― 現在、第二事業部ではどれくらいの楽曲を管理することになっているんですか?

安井 まだ現在進行形の話があったりするので、具体的な数は言えませんが。他の出版社さんもありますし、条件を比べていただいて、自分が預けるにはどこが一番メリットが高いのかを、理解していただいている段階ですね。

―― 出版社による違いはどこになりますか?

小林 日本に音楽出版社は数百社もあるんですね。それぞれに得意分野を持っている。テレビや映画会社、レコード会社の関係、アーティストの事務所など、得意分野が違います。それを作家さんが自分の曲をどうしたいか、あるいは自分自身をどうしたいかによって、選べるということです。

Re:nG どの媒体に強いかということですね。カラオケに強いのがエクシングさん、CDも出すということになればクエイクさんというように、結局プロモーション手法だと思うんですよね。レーベルや事務所のお抱えではなく、作家個人が音楽出版社を選べるということでもありますから。

―― 一人の作家が複数の出版社と契約してもいいということですね。

Re:nG そうですね。

―― それは出版社側としてはイヤじゃありません?

小林 いや、全然。JASRACに全信託している作家さんでも、CMタイアップがついたので、その曲だけ音楽出版社と契約して、CMだけ支分権を外しますということはあり得るので。

Re:nG そこがちょっと疑問で、「全信託」と「支分権」は矛盾しないんですか?

小林 JASRACでは全曲信託してくださいという前提なんですが、特定の楽曲について音楽出版社との間に著作権譲渡の契約がある場合はそちらが優先します。あるテレビ番組のタイアップが付いたために他の番組やCMでは使えないということも実際にはありますから。「原則」と「例外」がある、ということですね。

―― ということはJASRACに個人で信託した場合でも支分権は行使できるわけですね。

小林 まったくないわけではないです。ただ、あくまでも「例外」であって、専門の知識や経験が必要なります。

―― じゃあボカロPもそれでやればいいじゃない、という話にもなるわけですが、JASRACの会員って個人でなれるほど安くないですよね?

Re:nG 安くはないと思いますね。それに利用実績がないと受け付けてもらえません。

―― 今だったらカラオケが実績になりませんか?

Re:nG ええ、実績になります。カラオケやライブが一般化して、CDや着うたも個人ベースで発表できるようになった現状では、個人で信託するという選択肢もアリだと思います。レーベルのように上位に立たれるのではなく、作家と対等に話しあって、できる範囲で出版がプロモーションしてくれるというのはうれしいものですよ。そこは個人管理ではできないことですよね。

―― この件でいわゆる「嫌儲」のような空気は感じますか?

Re:nG 僕は全然ないですね。リスナーの意識が変わってきたなと感じています。今までの不遇の歴史というか、ライブで演奏されても、カラオケで歌っても、作家にお金が入らないとネットでは知れ渡っている。すると、だんだん可哀想になってくるんじゃないですかね。そういうステップがあって、リスナー、界隈ありきの文化を大事にしてきた積み重ねというか、信用のようなものがあるんじゃないかと思います。



 今回の部分信託は、ネットや同人市場の音楽文化と大きくぶつかることなく、収益を上げられる手段のひとつ。それが作家にとってのカラオケになるかもしれない。これは既存の音楽ビジネスの側が、ネット発の音楽にチューニングするワンステップでもあったと思う。そんな風に業界の慣習を変えた原動力が、ボーカロイドとカラオケだったというのが日本らしいし、それが新しい音楽文化につながればさらに面白い。



著者紹介――四本淑三

 1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。

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