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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」第42回

カラオケでボカロPにも著作権使用料が

「作家が主役」の時代――JASRAC・部分信託で何が変わる?

2010年12月25日 12時00分更新

文● 四本淑三

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いまどき包括契約しかないなんて

―― エクシングにコンタクトを取ったのはいつ頃ですか?

Re:nG 2008年の1月ですね。最初はリスナーの問い合わせで知ったんです。うたスキのリアルタイムリクエストに自分の曲が出ていて、(表示ステータスが)「交渉中」になっているという。それでJOYSOUNDは誰にどういう交渉をしているんだろうと。

Re:nGさん。エクシングとコンタクトを取りはじめたのは2008年1月

―― その段階では、Re:nGさんには連絡は来ていなかったわけですね。

Re:nG はい。それでエクシングさんにツテのある人を探して、その時に紹介されたのが小林さんです。そこで投票開始してもオーケーですとお話しました。無信託の曲の場合に(勝手にカラオケ化できないので)交渉中というステータスになるそうなんです。そもそも誰の曲かも分からないので、やりようがないと。

―― ボカロ曲としては最初期にカラオケ入りしたと思うのですが、そのときの印象は?

Re:nG 一般層の目に止まりやすいところに出たというのが嬉しかったですね。まだボーカロイドは不遇の扱いというか、ニコ動の中だけの世界だったので。もっと敷居を下げてやれば、外からも見に来る人が増えるんじゃないか、ということは考えていました。その一環としてカラオケの存在は大きかったですね。

―― 世間的には「Pにお金が入らなくて可哀想」という形で、カラオケ問題はクローズアップされていたわけですが、Re:nGさん的にはプロモーション効果も狙っていたということですか?

Re:nG はい、それはありました。カラオケにボカロ曲が入って盛り上がればいいなと。入曲の時点で「著作権使用料はこういう理由でお支払いできないんですよ」という話は伺っていたので。

―― 今までJASRACへの信託をしなかった理由は何ですか?

Re:nG JASRACへの直接信託を考えたんですけど、すると自分の楽曲すべてが信託されることになる。僕は別名義でやっているものもあるので、そちらは無信託のままでやりたい。すると出版を選ぶしかないんですが、今度は部分信託が難しいという状況でしたね。

―― 音楽出版社として今まで部分信託をやらなかった理由は何ですか? 小林さんから、作家のJASRACに対する嫌悪感から逡巡していた、という話は伺っています。

小林 まず、「どれくらいの権利者さんとお取引をして、どれくらい楽曲が使われたら、運営に必要なコストをねん出できるだろう?」という部分が分からなかったのが、なかなか踏み出せなかったところですね。全信託と部分信託では、別々に会計業務が発生しますので、そこを含めてどうだろう、ということを検討していました。

Re:nG それがボカロ曲が上位のランキングに入るようになったことで「これはひょっとして部分信託でも立ち行くんじゃないか?」という状況になったのが大きいと思いますね。

―― 世間的に見ると、エクシングとクエイクが同じ時期に業務を始めたということで、何かこのタイミングでブレイクスルーがあったのかと思えたんですが。

Re:nG エクシングさんの1~2週間前に、ある音楽会社が著作権の講習会をやるということでお話を伺ったんです。もしこのままエクシングさんもクリプトンさんも動かない状況が続くようなら、うちも出版を考えるというお話をされていたんですね。おそらくボーカロイドに関わる業界の方々は、誰もが考えていたんじゃないかと思います。

―― じゃあ、たまたま同時にそうなったと。

Re:nG そうですね。

―― カラオケを主軸にした場合、この部分信託の方法は現状最適解のように思えるんですが、その評価はどうですか?

Re:nG 僕はこのスキームしかないと思っていて、やっと出版側に理解してもらえたと思っています。今回の話はボカロPに限らないと思うんですよ。今まで作家というのはレーベルや事務所のお抱えだったんですが、そもそも自分がレーベルの機能を持って動いているわけですから。Amazonを使えば全世界に売れるし。

「今まで作家というのはレーベルや事務所のお抱えだったんですが、そもそも自分がレーベルの機能を持って動いているわけですから」(Re:nGさん)

―― デメリットはありませんか?

Re:nG 今回ひとつダメになるのは、同人イベントでCDを流す場合です。今までだったらPに許可をもらえば良かったものが、会場自体がJASRACと契約していないと、1曲いくらという形で支払いが発生するんですね。

―― 「演奏」とみなされて演奏権の使用料が発生すると。

Re:nG だから、そのために曲を残しておくのはありだと思うんですね。曲単位の信託なので。結局今、ネックになるのは包括契約になっている業界のスキームです。業界の仕組みを考えればやむなしという気持ちもあるんですが、いまどき包括契約しかないなんてどうなんだ、という気持ちもあります。

小林 音楽著作権の処理は知識だけではなく、情報交換や経験の積み重ねが必要ですし、専門家が日々の業務を行っていますが、そうした中でほぼ全信託ということが業界の慣行になっていたと思われます。

(次のページに続く)

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