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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第19回

AiR×講談社×キングレコードの新電子雑誌

逆を目指す講談社『BOX-AiR』、掲載作すべてをアニメ化検討!?

2010年12月29日 09時00分更新

文● まつもとあつし

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動き始めたバリューチェーンの再構築

 拙著『生き残るメディア 死ぬメディア』でも触れたように、バリューチェーンのデジタル化が進む中で、大企業が自社グループ内で権利を360度活用する垂直統合、そしてユニークな作品をコンパクトな組織でスピーディーに世に問うていく方向という二極化が進んでいる。

 今回の動きは、講談社グループとしては前者の取り組みの一環と言えるが、電子雑誌の部分は後者の代表例とも言えるAiRと進めるという、いわばハイブリッド型だ。

 AiR、講談社、キングレコードが推し進めるBOX-AiRは、原作付きアニメ作品のテレビ放送とDVDでの資金回収という、もはや成立が難しくなりつつあるモデルに代わる、新たな手法を打ち立てることができるのだろうか? 1月には受賞作品(アニメ化検討作品)が収録された創刊号が発売される予定だ。その展開を見守っていきたいと思う。

グッスマ安藝社長、『イヴの時間』長江プロデューサーをお招きして出版記念イベント開催

「ブラック★ロックシューター」

「イヴの時間」

 今回取り上げたBOX-AiRは、アニメ化という部分に注目すると、連載第12回で整理したように、アニメビジネスを考えるときに欠かせない3つの理論(バリューチェーン、ウィンドウウィングモデル、グッドウィルモデル)とも関係してくる。

 電子雑誌が初出となる原作の単行本に、そのアニメ版を付属させるというBOX-AiRの手法も、現状のビジネスモデルからの脱却を目指す試みの1つにほかならない。

 現在、筆者が大学院の論文の事例として取り上げているアニメ『イヴの時間』(関連記事)は、テレビを中心に置かず、映像の展開メディアを精密に設計するウィンドウウィングモデルの先行事例だ。

 また、3回に渡って取り上げた『ブラック★ロックシューター』(関連記事)は、コンテンツへのロイヤリティを高め、商品で投資の回収を図るグッドウィルモデルの代表的な事例といえる。

 そしてこの2つの事例については、年が明けた1月10日に開催する拙著の出版記念イベントに長江プロデューサー、安芸社長をお招きしてディスカッションも行なう予定だ。今回取り上げたBOX-AiRでもこれから試みられるであろう、原作から映像化までのバリューチェーンの再構築についても、お二人の持論を伺いたいと考えている。こちらもご期待いただきたい。

イベント名:アニメとかの動画コンテンツって、これからどうなるの?

日時:2011年1月10日(月)14:30~16:30(開場14:00)

司会:まつもとあつし(『生き残るメディア 死ぬメディア』著者)

ゲスト:安藝貴範氏/長江 努氏

定員:50名

費用:無料

主催:デジタルハリウッド大学大学院/株式会社アスキー・メディアワークス

申し込みはこちらから

著者紹介:まつもとあつし

ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環に在籍。ネットコミュニティやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、映像コンテンツのプロデュース活動を行なっている。DCM修士。この連載をまとめた新書『生き残るメディア 死ぬメディア 出版・映像ビジネスのゆくえ』(アスキー新書)も好評発売中。公式サイト松本淳PM事務所[ampm]。Twitterアカウントは@a_matsumoto

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