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鳥居一豊の「最新AVプロダクツ一刀両断」 第24回

iPodやPCの音をピュアオーディオグレードで楽しむ!

オンキヨー「ND-S1000」&「DAC-1000」を徹底的に試聴!

2010年12月22日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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Apple TVなどとも比較しながら徹底的に試聴!

ND-S1000にiPhoneを接続

ND-S1000にiPhoneを接続(試聴はiPod touchで行なった)

 試聴は筆者宅のシステムを使用して、iPodのヘッドホン出力/ND-S1のデジタル出力/ND-S1000+DAC-1000のアナログ出力を比較した。ちなみに使用している機材は「iPod touch」(第3世代)。比較試聴に使用したソースは、「Platina Jazz:Anime Standards Vol.2」より「はじめてのチュウ」。

 原曲もアニメファンの垣根を越えて人気のあるものだが、ニクラス・ガブリエソンの男性ヴォーカルのフランク・シナトラを意識した唱法で、往年のジャズスタンダードとして再現している。なお、音源はAIFF形式でCDそのままのリニアPCMでリッピングしている。

 さっそく、iPodのヘッドホン出力をAVアンプのアナログ入力に接続して聴いてみる。ブルース調のボーカルはクリアに再現されるものの、一聴して音がくもり気味で、低域の伸びも不足していることがわかる。

 普段はヘッドホンを使ってこの音を聴いているわけだが、本格的な機器で試聴すると、どうしてもクオリティーには限界があることがわかる。

 これを踏まえて、ND-S1000にiPodを接続し、同軸デジタル出力をAVアンプに接続して聴いてみた。ドラムの細かい音の余韻やホーンの厚みのある響きなどがしっかりと再現され、かなり聴き応えのある音になった。

 全体的な音の傾向は色付けの少ないストレートなサウンド。iPodの中の楽曲データをそのまま出し尽くしていると感じる情報量の豊かな再現だ。このグレードになると、わざわざCDと同じ情報量のリニアPCMで保存して良かったと感じるし、MP3形式はもちろん、アップルロスレスのデータとの音質的な違いも明瞭に再現される。MP3では音が痩せた感じになるし、アップルロスレスは絶対的なクオリティの差は少ないが、情報量というよりも音の密度感がやや薄まって平板な印象になると感じる。

 続いて、ND-S1000デジタル出力をDAC-1000に接続し、そのアナログ出力をAVアンプに接続して聴いてみる。基本的な音調は大きく変わらず、忠実感のあるストレートなサウンドだが、スネアドラムの微妙な音の響きがさらに明瞭になり、左右の音がさらに広がった。

 細かな音のひとつひとつを繊細に描き分ける傾向で、アルトサックスのブリっとした感じの低音はやや細身になるものの、ボーカルやピアノのタッチはより立ち上がりが素早くなり、曲のグルーブ感がしっかりと出てくる。

 これはかなり素晴らしいクオリティで、ブラインドで聞かされたら、(CDと同じリニアPCMとはいえ)iPodで再生した音源とは思えないものとなる。逆に言えば、ND-S1000とDAC-1000を使えば、iPodでもここまでの音の引き出せるのか、と驚嘆した。

 さらに、iTunesで管理している音源の再生用として使っているApple TVや、CDプレーヤーでの直接再生とも比較してみた。

 Apple TVについては、関連記事を読んでいただくとして、DLNAを基本的にサポートしないMacintoshでは、iTunesで管理している楽曲、しかもアップルロスレスやAIFFなど、あまり互換性の高くない音源データの曲をネットワーク再生することが難しい。簡単にそれを実現するには、Apple TVを使うのがベターだろう。

 あるいは、iPodに転送してND-S1000などを使って再生するわけだが、これらの音質の違いは個人的にも気になるところだった。

 結果から言えば、音質的には明らかに異なっていた。Apple TVは中低位域が太めのリッチな音で、その分、細かいニュアンスの再現が不足気味だった。これは、映画などの再生を意識したものという気もするが、聴き心地がよくBGM的に鳴らすのならば気持ちよく音楽を楽しめるが、じっくりと聴き込むといろいろと物足りないと感じる。

 オーディオ的な鑑賞という意味では、iPod+ND-S1000の方がやや上手だと感じた。DAC-1000を加えたら残念ながら比較にならない。Apple TV側の出力がHDMI出力のため、音質的には不利となっている可能性もある。今回の主題ではないため割愛するが、個人的にはApple TVのHDMI出力と光デジタル出力の音質差を検証してみたくなった。

いよいよCDは出番がなくなる!?

今回試聴した手持ちの音楽ソース

今回試聴した手持ちの音楽ソース

 究極にして王道であるCDプレーヤーの音を比較してみる。CDプレーヤーは、パイオニアのユニバーサルプレーヤー「DV-AX5AVi」(生産完了品、当時の定価21万円)のアナログ出力をAVアンプに接続して使っている。ミドルクラスの製品とはいえ、音は立派で低域の伸びがしっかりとしており、聴き応えのある再生音となる。

 個人的な印象で言えば、聴き慣れた音ということもあって、CDプレーヤーがやや好印象だが、ND-S1000とDAC-1000の組み合わせと比べると圧倒的な差は少ない。ステージの広がり感や響きの細やかさ、繊細さといった点では上回る部分もあり、聴くソースや好みによっては逆転もありうると感じた。

 元々はiPodに収録された音が、CDプレーヤーと同レベルで語れてしまうのだから驚いた話である。そのうえで、iPodならばCDプレーヤーのようにディスクを一枚一枚入れ替えずに聴ける便利さもあるし、ND-S1000ならばPCの音源の再生も可能と、利便性では圧倒的な差がある。

 最近はよほど気合いの入ったときでないとCDプレーヤーで再生することはなくなっているのだが、ますますその傾向に拍車がかかりそうだ。

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