このページの本文へ

漫画サイト「Jコミ」仕分け座談会レポート

都条例は「かつてない脅威」――漫画関係者が激白

2010年12月22日 12時00分更新

文● まつもとあつし

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

世の中の不安が高まるたびに規制されるマンガ・アニメ

堀田 海外の例ですが、韓国でも1997年に「青少年保護法」という、今回とそっくりな制度が始まりました。現場にはやはり影響があって、特に新人漫画家さんは萎縮が起こったと言われています。それ以外にも要因はあったかもしれませんが、雑誌やマンガの発行点数は減少し、韓国のコンテンツ振興にも大きな影響が出たと言われています。

「韓国でも1997年、そっくりな制度が始まった」(堀田純司氏)

小梅 僕は、法律でマンガやアニメが他の創作物に対してひとつ下の扱いを受けた、というのがショックでした。正直、マンガを描いていても元気が出なくなりました。海外に展開するため、国内でのコンテンツをある意味でキレイにしておこうということなんでしょうか?

 それはないと思いますが……。アニメなどでも海外に出すときは、その国のルールに合わせて表現などを調整しますが、国内でまず展開するものをそちら(海外)に合わせるということはやらないんじゃないでしょうか。

峯村 国内でも、紙とケータイ向けで表現を変えるということはやっています。比較すると携帯の方が表現は抑えめにしてクリアすることで、今のような市場を作れている部分というのはあると思います。

堀田 マンガ編集者として振り返ると、1995年の「新世紀エヴァンゲリオン」以降はクールジャパンなどと言われて持てはやされましたが、もともとはマンガやアニメの立場ってすごく弱くて、小説などに比べて低く見られてきたという歴史がありました。

 同じ表現でも小説ではOKなのに、マンガ・アニメだとNGという具合に、もともと弱い表現媒体なんですよ。世の中が不安に満ちてくると、まず(マンガやアニメが)規制の対象になるという歴史を繰り返してきた。漫画家側もそれには慣れている。でも今回「これはひどいぞ」と漫画家側が危機感を持って怒っているのは、社会(共同体)の利益のためには、個人の描きたい、読みたいという思いを制限してもいいという空気を感じ取ったからではないでしょうか?

 そしてもうひとつは、そこに対する描き手と読み手の態度表明が今回ネットから盛り上がりを見せたのですが、規制を進める側がそれに聞く耳を持たない、というのがさらに問題だったと感じています。

「海外を含めた漫画市場にはどう影響するか」も話題に

 コミュニティに対する不安が背景にあるというのは理解できますね。しかし、それに対抗するのであれば、政治家・役人という公人としてではなく私人の立場で、たとえば不買運動を展開するといった方が、よほど実効性があると思うんですよ。いずれにしても今回のような形での規制は、マンガは日本のコンテンツ産業の核なので、係数としての影響は大きいと思いますよ。

赤松 政府の方針ではコンテンツ振興を謳っているのに、一方で(実質的に)表現に規制を設けるというのが、とても「バタバタしている」という印象をもちます。都知事と首相で意見が食い違ったり(笑)。

 過渡期なのかもしれません。ただ、だからこそ著者と編集・出版社が力を合わせて逆に主導権を持てるチャンスもある、そうなると良いなと思います。今こうなってしまったから、これで終わり、ということではないはずです。

「Jコミで何ができるのか」というところから議論は後半へ

(次のページに続く)

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン