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鳥居一豊の「最新AVプロダクツ一刀両断」 第23回

家庭におけるホームシアター実現の難問をまとめて解決!!

初心者に勧めたい!! ソニーの高級AVアンプ「TA-DA5600ES」

2010年12月15日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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HDMI入力5系統を備えるなど、十分な入力端子を備える。新規に搭載されたのは、4ポートのハブ機能を持つEthernet端子。他社にはない独自のフィーチャーだ。また、スピーカー端子は新たにフロントハイチャンネル用も用意され、フロントハイを使った7.1ch再生への対応が可能だ

本体背面。HDMI入力5系統を備えるなど、十分な入力端子を備える。新規に搭載されたのは、4ポートのハブ機能を持つEthernet端子。他社にはない独自のフィーチャーだ。また、スピーカー端子は新たにフロントハイチャンネル用も用意され、フロントハイを使った7.1ch再生への対応が可能だ

 背面を見ると、一見すると一般的なAVアンプと変わらず、各種の入出力端子がずらりと並んでいるが、特徴的なのが4ポートのEthernet端子。これをネットワークハブとして、薄型テレビやBDレコーダーなどと接続してもいいのだが、4ポートのハブを設けた最大の理由は、オーディオコンテンツが保存されているPCやNASを直結するため。ブロードバンドルーター側のハブからそれぞれを配線した場合と比べて、PCやNASとAVアンプの配線長を短くでき、音質劣化の原因を抑えられるというわけだ。

 なお、この4ポートの端子は電極の品質や外装ケースがしっかりとしたものが選定されており、音質がいいのは3番と4番とされている。ネットワーク端子の音質にまでこだわるというと、PC主体のユーザーは疑問を感じるかもしれないが、最近では音質にこだわったネットワークケーブルなるものまで存在しており、こういった部分までこだわるのもオーディオの面白いところだ。

 外側から見ることはできないが、シャーシは従来から採用している「メタル・アシスト・ホリゾンタル・FBシャーシ」を採用。これは、鋼板のシャーシのヨコ方向に梁となるサブシャーシを配置して強度を高めたもの。

 最も重量のある電源トランスがこのサブシャーシが支えるためトランスが安定して、振動の影響を減らしている。これに加え、パワーアンプブロックを補強して、より部品振動を抑えている。これは特に、音の濁りをなくし、低音のしっかりとした再現につながるという。


調整や設定はGUIで簡単に操作できる

設定項目の「クイックセットアップ」。手軽に使いたい場合は、こちらで簡単に済ますことができる

設定項目の「クイックセットアップ」。手軽に使いたい場合は、こちらで簡単に済ますことができる

 実際に製品をセットアップし、調整などを行なってみることにする。ちなみに、試聴は筆者の自宅で行ない、筆者が使用中のAVアンプと交換して音を出している。

 サラウンドバックを使用する7.1chの各スピーカーやBDレコーダー、テレビとの接続が完了したら、スピーカーなどの設定を行なう。これらの設定はすべてテレビの画面に表示されるGUIで行なえる。

 GUIは左端の機能アイコンを選ぶことで、さらに細かい設定が表示される方式で、機能や設定には簡単な説明も表示されるため、初心者でもわかりやすい。さらに、このメニューはオーバーレイ表示に対応しているので、テレビ放送や各種コンテンツの再生中でもメニューを重ねて表示することができる。

 逆に、リモコンで「GUIモード」を切り換えると、本体の表示パネルですべての設定や操作ができるようになる。これは、オーディオ再生時など、ディスプレーがOFFのときでも操作できるようにする配慮だ。

クイックセットアップでの操作は、測定する項目を選択するだけ。最初はすべての測定を行なうが、再度測定する場合は必要な部分だけ選択すればいい

クイックセットアップでの操作は、測定する項目を選択するだけ。最初はすべての測定を行なうが、再度測定する場合は必要な部分だけ選択すればいい

あとは測定用マイクを本体に接続し、開始を選択するだけで、測定と補正が行なわれる

あとは測定用マイクを本体に接続し、開始を選択するだけで、測定と補正が行なわれる

本体に同梱される測定用マイク。アンテナっぽいデザインだ

本体に同梱される測定用マイク。アンテナっぽいデザインだ

 最初に行なう設定は、もちろん自動音場補正。マイクによる音場測定を1ヵ所で行なう「クイックセットアップ」と、3ヵ所で行なう「エンハンスドセットアップ」があるが、いずれも測定時間はかなり短く、クイックで30秒、エンハンスドなら30秒×3の90秒で完了するので、エンハンスドセットアップでもさほど面倒なことはない。

「エンハンスドセットアップ」の場合は、3つのポジションで測定を行なう。それぞれのポジションごとに測定タイプを選択することもできる

「エンハンスドセットアップ」の場合は、3つのポジションで測定を行なう。それぞれのポジションごとに測定タイプを選択することもできる

エンハンスドセットアップでの測定完了後に、各スピーカーの周波数特性の様子をモニターすることができる

エンハンスドセットアップでの測定完了後に、各スピーカーの周波数特性の様子をモニターすることができる

 この設定が終わると、A.P.M.やスピーカーリロケーション with A.P.M.が選択できるようになる。ここで、これらの機能について詳しく紹介しよう。

 A.P.M.(Auto Phase Matching)は自動位相マッチング機能で、スピーカーの位相特性を補正するもの。位相というのは、ここではスピーカーユニット振動板が前に出る/奥に引っ込む動きを表わすものと考えていい。

 周波数特性は音色への影響が大きく、耳で聴いても違いはわかるが、位相特性はスピーカー単独で聴いてもなかなかわからない。ところが、位相特性の異なるスピーカーを2本並べて聴いてみると位相特性の違いがよくわかる。

 例えば、スピーカーの前後の動きがまったく正反対となる逆相の場合、片方のユニットが前に出るとき、もう片方は奥に引っ込むわけで、音の正体である空気の波の形が正反対になる。これは双方の波が互いに打ち消し合うことを意味しており、あきらかに変な音になる。ちょうどスピーカーの配線を片方だけ逆に接続してしまったときに起こる現象だ。

 各スピーカーは、それぞれ異なる特性を持っており、位相特性もまた微妙に異なる。2ウェイや3ウェイで異なるスピーカー同士の組み合わせでは、複数のうちひとつのユニットだけ位相が逆になっているような例があり、これが「異なるスピーカー同士でのサラウンドがうまくいきにくい原因」になるという。

 A.P.M.は、こうした位相特性のズレを補正し、異なるスピーカー同士でもあたかも同一スピーカーの組み合わせのように正しい状態で再生できるようにする機能である。筆者のスピーカー環境は、もともとステレオ再生用に使っていたスピーカーをフロントに使い、あとはセンターもリアもサラウンドバックも、それぞれ別のメーカーのものを追加していったので、この位相特性の補正は実に頼りになる。

 スピーカーリロケーション with A.P.M.は、位相特性が整った各スピーカーの位置まで変えてしまうもの。この仕組みは、ステレオの2つのスピーカーでバランス調整を右寄り/左寄りにいじってみると、中央にあるはずのボーカルなどの音像が左右に動くのと同じ仕組み。難しい言葉で言うと“ファントム定位”というが、これはステレオペアで設計されたスピーカーのように、周波数特性も位相特性も揃っていないとできないことなのだ。

 この仕組みを利用することで、スピーカーの配置をより理想的な配置に調整できるというわけだ。理想的なスピーカー配置というのは、すべてのスピーカーが聴取位置から等距離にある配置で、つまりスピーカーは円周上に配置されるということ。

 こんな配置を一般のリビングで実現するのは極めて難しい。物理的に実現できたとしても、奥さんが抵抗するだろう。結果として、フロント左/センター/フロント右が一直線に並んだり、リアスピーカーが部屋の隅っこに追いやられたりといった歪んだレイアウトになることが多い。

 今までは、この音量差の補正やディレイ(信号の遅延)によって距離差を補正していたのだが、スピーカーリロケーション with A.P.M.では、隣接するスピーカーからも互いのチャンネルの音を再生することで、より正確に位置の補正が可能になるというわけだ。

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