呉智英氏、保坂展人氏ら都条例シンポに登壇 『非実在犯罪規制』を語る
漫画の中で犯罪を表現したらアウト!?
2010年12月13日 09時00分更新
前回反対した民主党も賛成に回る?
ここで2人の都議が登場。まず民主党の浅野克彦都議は、「6月では反対の立場に回ったが、今回は賛成に回る」と明言。
「新改正案ではあくまで犯罪と性行及び性交類似行為などがセットになってなければ規制の対象とはならず、しかも不当に賛美・誇張され、青少年の成長を阻害するものが規制されるという条件が課されているので、それ以外のものにとっては改正しても問題はない」とした。
一方、日本共産党都議会議員団幹事長であり総務委員会理事でもある吉田信夫氏は、「知事は表現を抑える気はなく場所を変えるだけと言ったが、出版や流通の自由が確保されない表現の自由があるだろうか。出版の自由が確保されてこその自由。一致団結して改悪に反対する」と立場を表明した。
6月では反対としていた政党も、今回は揺れ動いているさまが見て取れた。
初出時、写真とキャプションに誤りがありました。お詫びするとともに訂正いたします(2010年12月13日)
規制反対を強く叫ぶ漫画家たち
続けて、パネリストとして登壇した漫画家たちが、規制反対の意見を述べていった。
まず漫画家の樹崎聖氏は熱い語り口で、「都知事は同性愛者がテレビに出ること自体を否定したが、コンプレックス故に産まれるものが芸術であり、芸術家にマイノリティが多いのは当然。漫画は、描かずにいられずそれ以外の全てを捨てて描いた特別の思いを持つ人の文化」と語った。
同じく漫画家の近藤ようこ氏は、「具体的にどこからどこまで規制されるのか基準が曖昧なので、漫画家も編集も迷い危惧する。小説・演劇・映画では許されるのになぜ漫画では規制されるのか。漫画がこのような形で潰されないことを願う」と述べた。
漫画家とり・みき氏は、実際は漫画家のなかでも書店ではゾーニングすべきという意見が多いにもかかわらず、ニュースでは規制反対派の漫画家と規制賛成派の保護者が敵対しているように報じられることを危惧し、「話し合えばいいのにいきなり法規制となることに不快感を感じる」という。
また、「話し合うためには相手に届く言葉を持つ努力をする必要があり、漫画は何をやってもいいが、それだけの覚悟がなければ言葉は相手に届かない」と警告した。
作家・山本弘氏は、石原慎太郎都知事の『スパルタ教育』という著作の「ヌード画を隠すな」「読んでよいものと悪いものに分けるな」「子どもの不良性を摘むな」などの記述を紹介。
また、石原都知事の作品『処刑の部屋』を真似て女性に睡眠薬を飲ませてレイプする犯罪が起きたこと、当時は都知事の作品『太陽の季節』は悪影響を与えるものと認識されていたことを指摘。
「今回漫画やアニメが規制の対象で実写を除いているのは、含めると石原作品が含まれるから」だと述べた。
また、「幼い頃、父が置きっ放しにした性的なコンテンツが含まれる週刊誌の筒井康隆の小説が自分を作家にした」と自分の体験を述べた上で、「世の中には嫌いなもの汚いものも必要であり、それでこそ子どもは健全に育つのであり、無菌状態で育てるのは間違っている」とした。
さらに、「未成年強姦被害者数は昭和30年頃に多く、今は減っている。問題はないのに漫画が批判されるのは、見慣れないからであり、小説は当たり前として受け入れられているから。有害なものは時代とともに移り変わる」とまとめた。
小林来夏の名前でライトノベルも書いているBL(ボーイズラブ)作家の水戸泉氏は、「BLを読んだ読者の女性にどんな悪影響を与えるというのか」と疑問を呈した。治安維持本部担当者は問題ないとする竹宮恵子作の『風と木の詩』は、厳密には条例に引っかかると考えられるが、「(同作品を)9歳の頃読んだが、だめな大人にはなってない。我々の世代は作品が悪影響を与えないという生き証人」と語った。
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