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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第81回

見えてきた2011~2012年のAMDモバイル向けCPUの姿

2010年12月13日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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2012年後半には大きなラインナップ変更が?

 問題は登場時期である。連載79回3ページ目の最後のスライドでは、台湾TSMCおよび米GLOBALFOUNDRIESを使ってのAPUのロードマップが示されている。

AMDが利用する半導体製造プロセスのロードマップ

AMDが利用する半導体製造プロセスのロードマップ

 28nm世代に関して、AMDはディスクリートGPUをTSMCに、APUをGLOBALFOUNDRIESで製造するという、もっぱらの噂である。どちらにしても量産に入るのは2012年中旬(スライドどおりなら第2四半期以降)で、製品が出てくるのは早くても2012年後半ということになる。したがってそこまでの1年半は、Zacate/Ontarioでなんとか賄わなければいけなくなるようだ。そうなると、2012年後半にモバイル向けCPUは、大きくラインナップ変更があるだろう、というのが筆者の予測である。

 余談ながら、上のプロセスロードマップを見ると、32nmを唯一の例外として、あとは皆ハーフノードのプロセスばかりになっている。というよりも、最近はフルノード/ハーフノードがぐちゃぐちゃと混在している。本来ならプロセス縮小のロードマップは以下のようになるはずだった。

プロセス縮小の進化 右に行くほど微細化
フルノード 90nm 65nm 45nm 32nm 22nm 16nm
ハーフノード 80nm 55nm 40nm 28nm 20nm 14nm

 CPUは伝統的にフルノードのみだが、GPUはこの両方を使ってきた。ところが、TSMCが32nmプロセスの立ち上げに失敗して中止し、28nmに注力したあたりからぐちゃぐちゃになってしまい、28nm以後はハーフノードのみがメインとなりつつある。ちなみにインテルは依然としてフルノードだし、GLOBALFOUNDRIESもCPU向けのSOIはフルノードである。

 問題は22nmと16nmという、本来ならCPU向けに予定されていたプロセスでAPUを作るという話が、上のロードマップから消えていることだ。2012年のTrinityは、32nmプロセスを使うという話なので問題ない。しかし、Trinityの後継製品がどのプロセスになるのかが、非常に興味深い。Krishna/Wichitaの後継製品と同じく20nmを使うとすると、量産開始が2013年後半だから、かろうじて2013年の年末商戦に間に合うかどうかという時期になる。これではTrinityの発表から1年半も開いてしまい、ちょっと厳しい。あるいは28nmを使った、「次世代BulldozerベースのAPU」なんてものが登場してくるのかもしれない。

またも方針を変更する
AMDの組み込み向けプロセッサー

 さて、最後に組み込み向けプロセッサーの今後についてまとめよう。AMDの組み込み向けプロセッサーについては、一言で言って「ころころ方針を変えすぎて商売になっていない」という状況である。シェアベースで言えば、もはやVIA Technologiesの方がはるかに大きいという状況で、会社規模の大小よりも方針を堅持することの方が、組み込み向けでは重要と言える。

 さてその組み込み向けであるが、今回また方針を変えた。AMDは2003年に、米National Semiconductorから「Geode」シリーズを買収した(関連記事)。ところが途中で方針が変わり、Geodeの資産(とGeodeの顧客)をどんどん手放す方向で動いていたのだが、ついにGeodeの名前自体もやめるそうだ。

Geode買収後から2011年までのAMD組み込み向けロードマップ

Geode買収後から2011年までのAMD組み込み向けロードマップ

次代の組み込み向けプロセッサーは「Gシリーズ」と「R」シリーズに

次代の組み込み向けプロセッサーは「Gシリーズ」と「R」シリーズに

 2011年からは、「AMD G-Series」「R-Series」という名称に変わる。話としては単純で、Llano/Zacate/Ontarioをベースとした組み込み向け製品を投入するということだ。これにともない、現在モバイル向けのTurion II/Athlon II/Sempronや、一部低消費電力タイプのOpteron、およびおそらくはGeodeシリーズ中唯一AMDで開発された「Geode LX」も含めて、すべて販売終了に向かうと思われる。

 組み込み向けに一番大事なことは継続性であるということを、まだAMDは学習できていないようだ。

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