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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第81回

見えてきた2011~2012年のAMDモバイル向けCPUの姿

2010年12月13日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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2012年にはTrinity APUが登場
内蔵GPUは5xxx? 6xxx? 7xxx?

AMDのモバイル向けCPUロードマップ

AMDのモバイル向けCPUロードマップ

 Llanoに続いて2012年に投入されるのが、「Trinity APU」である。こちらはStarsコアに代えて、次世代BulldozerコアをベースにGPUを統合したものとなる。時期的にはおそらく、2012年の後半登場になると思われる。もしかしたらLlanoがワンポイントリリーフに終わり、2012年早々にTrinityが登場する可能性もなくはない。だが、後述のようにLlanoですらそれなりに遅れたので、「GPUコアを替えずにCPUコアだけ更新」という方法でもなければ、それなりに時間がかかるだろう。

 プロセスは引き続き32nmになっていて、GPUも引き続きDirectX 11相当である。そもそも、現時点ではLlanoのGPUが何かは明確にされていない。世代としては「Evergreen」(Radeon HD 5xxx)の世代でないと、そもそも設計が間に合わない。また、性能的には「Redwood(Radeon HD 55xx/56xx)相当」と言われている。実際ダイサイズを勘案すると、そうそう大きなGPUダイをAPU内に投入するのは無理だから、これはわりと確実なところである。

 2012年後半というと、後述する28nmプロセスが立ち上がる頃なので、「Radeon HD 7xxx?」シリーズも視野に入る。だが、おそらくこの時期までに統合するのは無理だろう。初代「K8」(Athlon 64)から延々とSOIプロセスを手がけていたAMDをもってしても、バルクプロセスで製造されていたGPUを、SOIに移行するのには手間が掛かっている(そのため、Llanoも当初の予定から大分遅れた)。

 そうなると、引き続きEvergreenを使うか、「Island」系列(Radeon HD 6xxx)を投入するかになる。個人的には、GPUにも何らかの進展がないとさすがにセールスポイントとして弱くなるので、おそらくIslandベースに移行するのではないかと思う(Redwoodベースのコアのまま動作周波数を上げるという手もあるだろうが)。Islandの場合、Stream Processor数を減らしながら効率を上げて性能を保つ、という改善が図られており、これはダイサイズが厳しいAPUには非常にありがたい特徴だからだ。

 モバイル向けは最大でも4コア(4P)構成のようなので、Llanoの2~4コアがそのまま、Trinityの2~4コアで置き換えられる形になると思われる。

Zacate/Ontarioはすでに出荷開始
2012年には次世代BobcatコアのCPUが登場

 AMDのスライドではメインストリームの下に、「Essential」「HD Netbook」カテゴリーが位置付けられている。これは要するに、現在はTurion II NEO/Athlon IIを提供しているカテゴリーである。ここに関しては、すでに「Zacate」「Ontario」をOEM向けに出荷開始したとAMDは発表している。OEMメーカーの製品お披露目は、2011年1月にラスベガスで開催されるInternational CES 2011で行なわれ、早ければ2月くらいには製品出荷が始まりそうだ。

 このZacate/Ontarioは、機能的にはまったく同一で、TDP枠が18WのものをZacate、9WのものがOntarioとなる。またそれぞれに1コア/2コアの製品ラインナップがあるようで、あとはこのTDP枠に収まるように、CPUおよびGPUの動作周波数を調整する、という形になるようだ。

 Zacate/Ontarioは(余程のことがない限り)間違いなくこのスケジュールで登場するだろうが、問題は次の2012年である。前ページのCPUロードマップスライドにあるとおり、Zacate/Ontarioの後継として、「Krishna」「Wichita」という製品が2012年に予定されている。明示されてはいないが、おそらくKrishnaが2~4コア、Wichitaが1~2コアとなるだろう。

 これらはいずれも次世代Bobcatコアを使うことで、アーキテクチャー側でも省電力化を図るほか、プロセスそのものも40nmから28nmにシュリンクして、省電力化を狙う。だが、これらの利点で動作周波数向上を目指すと、あっという間に消費電力が増えてしまう。おそらく動作周波数はZacate/Ontarioと大して変えずに、コアの数を2倍に増やして性能を上げる、という形の対応を行なってくると思われる。

 また、統合されるGPUはLlanoやTrinityとは異なり、28nmのバルクCMOSプロセスを使うため、もしAMDがRadeon HD 7xxxシリーズを、トップエンドのみならずメインストリーム/バリューまで同時に開発していたとすれば、タイミング的にはぎりぎり間に合う計算になる。しかし、開発期間には多少のマージンが必要なことを考えれば、やはりTrinityと同じくIsland系列のコアが入る公算が高いだろう。

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