ブラック★ロックシューターのモデルを注目しているのは制作会社
まつもと「なるほど。しかし、いずれにせよそういった作り手が増えないと、せっかく新しいビジネスモデルができたのに、今度は制作能力が不足してしまいませんか?」
安藝「今回のモデルに誰かが注目してくれるとすれば、パブリッシャーでもテレビ局でもなく、制作会社じゃないでしょうか。請負のモデルからシフトしたい。別のモデルも手に入れたいという考えは過去からあったと思います。
かといって、1クールのアニメを制作会社が自ら作っていこうとするには、ご存知の通り、2億円近いキャッシュが必要で、それは受託するのではなく、自分で用立てなければならない。リスクを丸抱えの状態」
まつもと「それで倒産する会社が増えましたからね」
安藝「だから、こういうやり方もあるね、という提案になったかもしれません。ブラック★ロックシューターは、パブリッシャーは参加していません。パブリッシング、フィギュアを含むマーチャンダイジング、広報宣伝など、委員会参加メンバーで展開しています。もう全部手弁当。
コンパクトなモデルでアニメ自体を成立させて、かつ自分たちのオリジナル作品を世に1本出すこと――それが可能であるらしいぞ、というのは(制作会社にとって)刺激になっていると思います。僕らのところに発表後、話に来てくれたの人たちの多くはアニメ制作会社です」
まつもと「そうなんですか」
安藝「『で、どうなの? いけるの?』と(笑)」
まつもと「儲かってますよって言えるわけですね」
安藝「はい。『なんとかね!』って。
パブリッシャーの方はこう言います。パブリッシャーにとってはモデルが増えることは嬉しいと。僕らが「やってみた」ということに対して、彼らは反対などないわけです。
もちろん半分は怒りますよ。タダで配るんじゃねえよ、バカ! というのも含めて。やっぱり表明しなきゃいけない怒りというのは、対外的に、立場的にあるから。でも、ビジネスモデルが増えていくことに関しては、何のてらいもなく受け入れます。
そしてやっぱり、一番興味を示すのは、今報われていない、もしくは苦しんでいると思い込んでいる、でも実はクリエイティブは全部そこにある、制作現場です。彼らにとって、現状を打ち砕くクリエイティブ&ビジネスモデルとしてブラック★ロックシューターは存在しているんです。
制作のみならず、マーケティングや販売もコンパクトな“自炊”が可能になってきた。テクノロジーの進歩が、何を選び取っていくのか、どう変化させていくのか? フィギュアから一歩だけコンテンツの世界に踏み込んでみて得られたものは、アニメの未来へのより強い希望と好奇心でした」
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