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富士通、SPARC Enterprise Mシリーズ新モデルを発表

SPARC Enterpriseはオラクルと富士通のダブルブランドに

2010年12月03日 09時00分更新

文● 渡邉利和

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12月2日、富士通はUNIXサーバー「SPARC Enterpise Mシリーズ」のモデルラインナップを更新し、新プロセッサ「SPARC64 VII+」を搭載することを発表した。あわせてブランド戦略も変更され、オラクル(旧サン・マイクロシステムズ)と富士通が同一のモデルを両者共通ブランドで販売することも発表された。

サン、富士通、オラクルの3社ロゴ入りという共通デザイン

会場に展示されていたSPARC Enterpriseの実機

 新プロセッサであるSPARC64 VII+は、現行のSPARC64 VIIの性能強化版にあたる。クロック周波数が従来の最大2.88GHzから最大3.0GHzに向上したほか、L2キャッシュは2倍の12MBに増量された。プロセッサ当たり4コアで、各コア同時2スレッド実行のSMTという基本アーキテクチャには変更はなく、性能向上幅は20%とされている。

新プロセッサであるSPARC64 VII+

 モデルラインナップは、1ソケットの「M3000」(2011年度予定、2U)、最大4ソケットの「M4000」(6U)、最大8ソケットの「M5000」(10U)、最大16ソケットの「M8000」(フロアスタンド)、最大64ソケットの「M9000」(フロアスタンド)の5モデルとなる。

 標準価格は、M4000が684万円(SPARC64 VII+×2CPU、8GBメモリ)、M5000が1163万円(SPARC64 VII+×2CPU、16GBメモリ)、M8000が4613万6000円(SPARC64 VII+×2CPU、32GBメモリ)、M9000が1億1093万6000円(SPARC64 VII+×4CPU、32GBメモリ)となっている。

 なお、以前から旧サン・マイクロシステムズのサーバーラインナップでも、スループット性能を重視した「Tシリーズ」用のプロセッサおよびサーバーはサンが開発しており、エンタープライズサーバー製品群は富士通のMシリーズをサンのブランドで販売するという形になっていた。しかし、オラクルによるサンの買収を経て、今回からサン、富士通、オラクルの3社のロゴが入った共通デザインを導入、製品の外観デザインが全世界で統一されることになった

サン、富士通、オラクルの3社のロゴが入った共通デザインを採用

プロセッサ開発は富士通、OSはオラクルという役割分担

富士通 執行役員副社長の佐相 秀幸氏

 まず富士通の取り組みについて説明を行なった同社の執行役員副社長の佐相 秀幸氏は、1990年代までの生産性向上を目的とした時代を「コンピュータセントリック」、ビジネスプロセス変革がテーマとなった現在までの状況を「ネットワークセントリック」と位置づけた上で、今後は「人を中心としたICT利活用の時代へ」という見通しを示し、知の創造、行動支援を実現する「ヒューマンセントリック」なコンピューティングの時代になるとした。こうした展望を踏まえ、富士通の製品戦略として「自社技術の強みをベースにフル製品スタックを提供」するとした。一方で同氏は、「フルスタックといっても富士通があらゆる分野すべてで強いわけではない」とし、「グローバルプレーヤとのアライアンスにより、さまざまな顧客要求に対応」していくという方針だとして、「こうした協業戦略によって、弱みを強みに転じていくことができる」としている。

ヒューマンセントリックなコンピュータ時代に向けて

グローバルの会社に対してはアライアンスを拡大

 ちなみに、同氏がパートナーとして明示したのは、OSレイヤでレッドハット、ヴイエムウェア、マイクロソフト、サーバーおよびミドルウェアでオラクル、ミドルウェアでSAP、セールスフォースドットコム、BMCソフトウェア、ストレージ分野ではブロケードとネットアップ、ネットワーク分野ではシスコであった。11月30日にはシマンテックが富士通との戦略的なパートナーシップの強化を発表していることからも、ここに来て富士通の協業戦略が明確化されてきていることが伺える。

 また、発表に同席した日本オラクルの代表執行役社長 最高経営責任者の遠藤 隆雄氏は富士通とオラクルの役割分担に関して、「OSの開発もプロセッサの開発も、ともに多額の投資を必要とするため、単独で両方を取り組むのは困難」として、「プロセッサ開発は富士通、OS開発はオラクル」と役割を分け合い、共同で製品開発を行なっていくという方針を示した。

日本オラクルの代表執行役社長 最高経営責任者の遠藤 隆雄氏

SPARCプラットフォームは富士通が背負うことに

 エンタープライズソフトウェアの会社だったオラクルがハードウェア中心にビジネスを展開していたサンを買収したことでサンのハードウェアの行く末を懸念する声も上がったのだが、結果的にエンタープライズサーバー分野でのSPARCプラットフォームに関しては事実上、富士通が単独で背負っていくという形で決着したと見て良さそうだ。

 買収前のサンも富士通のサーバーを自社製品として販売するという体制を取っていたが、当初の発表時点ではそれは次世代プロセッサ(コード名Rock)が完成するまでの一時的な措置という形にしていた。今回、SPARC Enterprise Mシリーズが両社共通デザインで提供されることになったのは、今後Mシリーズがカバーするエンタープライズサーバーの分野でオラクルが独自に製品開発を行なう可能性はほぼないという意味だと理解してよいように思われる。

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