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公取委「独禁法上問題なし」 - グーグルとヤフーの検索事業提携

2010年12月02日 21時48分更新

記事提供:SEMリサーチ

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公正取引委員会は2010年12月2日、米グーグルによるヤフー株式会社への検索エンジン提供について、現時点で独占禁止法上は問題となるものではないと回答した。

ヤフーは今年7月、米Googleからアルゴリズムサイト検索技術と検索連動型広告システムの提供を受けることを発表。この提携に伴い、12月時点で自然検索結果がGoogle提供のものに切り替わっている。両社は提携発表時に、今後も営業・サービスにおいて競争関係にあることは変わらない旨の説明を行っていたものの、マイクロソフトや楽天のほか、一部の専門家からは独禁法上の問題が指摘されていた。日本におけるGoogleの検索技術及び広告システムが実質的に90%以上のシェアを占めるためだ。

公正取引委員会は、本提携が両社からの説明通りに実施されないなどの場合、,インターネット検索サービス及び検索連動型広告の分野に大きな影響を与える可能性があると指摘した他、戦術の通り多方面から様々な意見や情報が寄せられたことから、両社の取り組みについて進捗状況等について調査していた。

公取委は、次の3点について調査を行った。

(1) ヤフー株式会社は,自社にとって最適であると判断して本件技術提供を受けることとしたと認められるか
(2) 本件技術提供は,本件相談時の説明どおりに実施に向けて進捗していると認められるか
(3) その他独占禁止法上問題となるおそれがある行為が認められるか


(1) について、2009年7月に米Yahoo!が自社検索エンジンの開発を停止し、米Microsoftの検索エンジンを採用することを決定したため、ヤフー株式会社は米Yahoo! Inc 以外の検索エンジンの性能を比較・検討して採用する必要に迫られた。この過程において、マイクロソフトと協議を重ねたもののBingは米Yahoo!の検索エンジンより性能的に勝るものではないと判断したほか、検索連動型広告システムの提供時期が遅くなると判断した。こうしたことから、ヤフーは現時点でもっとも優れた検索エンジンを提供している米Googleに依頼をしたと認定した。

(2) について、第三者からの意見聴取においても,本件技術提供を本件相談時の説明どおりに実施することができないとする情報に接することはなかったと説明。また、現時点において,広告価格等の商業上センシティブな情報の共有等によって協調的な行為が行われている事実も認められなかったという。

公取委は本件について、「インターネット検索サービス及び検索連動型広告に関する独自性確保」と「検索連動型広告に関する情報分離」に分けて詳細を説明している。

「インターネット検索サービス及び検索連動型広告に関する独自性確保」については、[a] ヤフーは検索クエリを独自に分析した上でGoogleサーバにクエリ送信するため検索結果は異なるものになること、[b] 本提携に関する契約書に、ヤフーが検索結果に独自情報を追加する旨は妨げられないとの規定が存在すること、[c] 両社で広告主、広告主の入札価格、広告掲載基準が異なるため、検索連動型広告は異なるものとなること、[d] 検索連動型広告の価格はオークション方式が採用されているほか、価格は品質スコアなど広告品質によって決定するため、仮にGoogleとYahoo!に広告を掲載しようとしても価格は基本的に異なること、[e] 両社は検索連動型広告の運営について引き続き競争していくこと、以上の点から、インターネット検索サービス及び検索連動型広告に関する独自性が確保される手段が講じられているものと判断した。

「検索連動型広告に関する情報分離」については、[a] ヤフーの検索連動型広告の情報にアクセスできるのは、米Googleの技術部門などの一部の者に限定されること、かつ、アクセスできるのは検索連動型広告システムの保守管理などの技術的な業務に限定されると説明していること、[b] ヤフーは、検索連動型広告システムを機能させるために必要な情報以外の情報を匿名化した上で米Googleに送信すると説明していること、[c] 広告価格を決定する要素は両社で共有しないこと、などから、公取委は,検索連動型広告に関する情報分離が確保される手段が講じられているものと認めた。

(3) について、両社の一方がすでに事業活動を行っている分野に相互進出しないこと、あるいは他方のシンジケーション・パートナーに対する営業活動を行わないといった協調的な行為は確認できなかったこと、広告などの表示順位を恣意的に高くする、検索結果に他事業者の情報や広告が表示されにくくするなどの具体的事実は認められなかったと結論づけた。

今後、公取委は本事業提携について引き続き注視することとし,独占禁止法に違反する疑いのある具体的事実に接した場合は,必要な調査を行うなど,厳正に対処すると説明している。

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個人的には、適切な判断だと思います。検索ビジネスを理解した上で本件を考えれば、両社は合理的。本当なら Bing もこの市場で存在感示して互いに競争してほしいとは思いますが、現状のBing日本版のパフォーマンスを考えると選択するわけにはいかないでしょう。

本問題を扱う勉強会やセミナーなどにいくつか参加しましたが、本件を法的観点から扱う大学教授や弁護士、法曹関係者の方々は、大きな勘違いや誤解をしている方が多いようで残念。私が間違いを指摘して説明しても、自分自身の誤った知識を正さないのはどうなのよ?と思います。変なプライドの高さが邪魔をしているのでしょうか。

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