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大河原克行が斬る「日本のIT業界」 第16回

企業導入には注意せよ!?

ITRが分析する、iPad導入の落とし穴

2010年12月02日 09時00分更新

文● 大河原克行

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企業のiPad導入の課題とは?

 このレポートでは企業導入に関してのいくつかの課題を指摘している。

 そのなかで、舘野シニア・アナリストは、「iPadをPCの代替品として導入するという発想そのものに問題がある」とする。

ITRのシニアアナリストである舘野真人氏

 iPadを導入を検討している企業の多くは、直感的な操作を実現でき、起動が速く、モバイル性に優れているiPadの方が、PCに不慣れな経営層や、即時性が求められる営業現場では有効に利用できるという点にメリットがあるとする。そして、ノートパソコンに比べて端末価格が安価であるという点も見逃せない要素となっている。

 そのため、iPadを現在使用しているノートパソコンに置き換えるという考え方が先行しやすい。だが、

 「ノートパソコンで行えたデータの作成や管理、印刷といった、PCで当たり前にできるような操作については、iPadでは機能面での制約を受け、結果的に利用できるシーンも限定されるといったことが見過ごされている。ましてや、アプリケーションのインストールや、OSのアップデートの際にもPCとの同期が必要となり、iPadの初期設定でもiTunesとの接続が前提となっている。基本的には、1対1の関係で紐づけられたPCがないと、iPadは導入できないという状況にある」(舘野氏)

 つまり、2台目、3台目という形でiPadを導入し、PCでは得られない新たな価値を創造するという点でのメリットはあるが、PCの完全な置き換えというのは、PCを利用しなくてはならないiPadにとっては、ナンセンスな発想といえるのだ。

 「実際、すべてのノートパソコンをiPadに置き換えようとして、見積もりを行った企業IT部門があった。途中で、iPadの特性を知り、それが無意味な作業であることを知ったという例も出ている」(舘野氏)

 ノートパソコンと比較して、どちらを導入するかといった発想は、企業導入においては意味がないというわけだ。

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