フラッシュストレージ特化で
「スカッ」と動く!
VAIO Xを使っている際の不満は、やはりCPUの非力さにともなう動作の遅さだった。ウェブを見ている時やテキストエディターで文字を書いていている時にイライラする……というほどのレベルではない。だが、PowerPointを使ったりEvernoteのクライアントで検索をしたりと、ほんのちょっとでも「重い」処理をすると、意外なくらい動作が遅く感じる。「やっぱりAtom Zだな」と思わざるを得ない。
だが、新Airはそういった不満を一切感じない。Atom ZとCore 2 Duoの差は確かに大きいだろうが、体感の動作速度についてはそれ以上の差を感じる。アプリの起動を含めた動作が実に速い。率直に言えば「メインマシンであるMacBook Proよりも速い」と感じるくらいなのだ。メインマシンはCore i7なのだから、その理由がCPUでないことは明白だ。
違いはもちろんストレージだ。新Airでは「フラッシュストレージ」という名称のSSDが利用されている。パーツ自体は、東芝が後日発表した「Blade X-gale」というスティック型のSSDである。この性能がかなり効いている。
筆者は一番低価格なモデルを購入したので、メインメモリーは2GBしかない。実際、アクティビティモニタでメモリーの使用状況をチェックすると、比較的すぐにメモリーを使い切っているようである。
これは技術的な裏付けをしっかり検証したわけではなく、あくまで筆者の「感触」だが、Mac OS Xは物理メモリーを使い切り、仮想記憶としてストレージを利用した際の「動作速度低下」が激しいように感じている。メインマシンのMacBook Proはメモリー4GBで運用しているのだが、日々メモリー不足と戦っているような印象だ。
もちろん動作が止まることはないが、気を抜くとメモリーを使い切り、動作が突然重くなる。特にウェブブラウザーである「Safari」が盛大にメモリーを使う傾向があるようで、定期的に終了しては、メモリーを解放する癖がつくほどだ。
メモリー搭載量は半分しかないので、新Airでもすぐにメモリーは使い切る。だがそうなっても、速度はイライラするほど落ちない。「スカッ」とした操作感、といった印象だ。アプリの起動ももちろん速いので、そこでもストレスは感じない。特にいいのは、アプリを終了する時の「キレの良さ」とでも言おうか。HDDを使っているMacBook Proの場合、アプリ終了までの時間がワンテンポ遅いのだが、新Airはそこが速い。
MacBook Air | MacBook Pro | VAIO X | |
---|---|---|---|
フラッシュストレージ 64GB | HDD | SSD 128GB | |
コールドブート(起動) | 14秒 | 40秒 | 27秒 |
スリープからの復帰 | ほぼ一瞬 | 3秒 | 3秒 |
休止(Deep sleep)からの復帰 | 13秒 | 23秒 | 24秒 |
電源オフ状態から、OSの起動までの時間は実測で14秒弱。「Office for Mac 2011」など、普段使うアプリをインストールした後の状況でこれであり、購入直後のテストでは11秒程度であった。これがMacBook Proの場合だと、起動時間は40秒程度もかかる。ただしこちらは、2年間に渡って使った環境を引き継いで利用しているので、同列で語るのは必ずしも正しくないだろうが。
VAIO Xとも比較してみよう。筆者が使っているのは128GBのSSDを搭載したモデルである。OSはWindows 7 Home Editionを利用している。起動時間は27秒だった。こちらも常用しているものであり、1年以上使い続けている環境なので、初期出荷状態ならもう少し短いだろう。
ただし、OSのコールドブート時間で比較するのは、必ずしも実情に即しているとは言い難い。日常的にはコールドブートを使うことはほとんどなく、スリープもしくは休止を利用しているからだ。
Macの場合、標準的に使われているスリープモードは「Safe Sleep」と呼ばれるものである。メモリー内容をHDDに待避する(すなわち休止と同じ状態)ものの、電源は切ってしまわず、通常のスリープ状態を維持する。本当にバッテリーが切れそうな時のみ完全に電源を切り、Windowsでいうところの「休止状態」に移行する。ちなみにMacでは、休止と同じ状態を「Deep Sleep」という。
新Airはフラッシュストレージとの組み合わせで、この機構を最大に生かしている。バッテリー駆動時で1時間以上動いていない時は、あえて電源を切って「休止」と同じ状態へ移行する。しかし読み込み速度が速いので、そこからの復帰でも起動時間はそう遅くない。新Airは「使用しない状態で30日動作する」とされているが、その理由はこの機構にある。
ストレージがフラッシュメモリーであることを前提に、システムとOSのチューニングを行なった機器というのが、新Airの秘密なのである。
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