このページの本文へ

「Jコミ」は電子書籍市場の起爆剤となるか

「ラブひな」赤松健さん、無料漫画サイト経営にかける「夢」

2010年12月02日 12時00分更新

文● まつもとあつし

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

絶版マンガをどう商品化するか?

―― 今後1ヵ月間のトライアルで効果が認められれば、いよいよ絶版マンガでの本サービスの開始ですね。それに向けてはどんなイメージを持っていますか?

赤松 一部にだけ支持されているような作品に広告を取ってこられるか、という課題は正直あります。たとえば5タイトルを束ねて、ある意味「人気を平均して」広告をもらうような工夫は必要になるでしょうね。

当日は漫画の締め切りに追われながらの取材となった


―― なるほど。そうなると、単行本を提供するというよりも、パッケージとしては雑誌や同人誌に近づきますね。

赤松 そういう見方もできるかもしれませんね。ただあくまでも、一度出版された、それも絶版だけが対象になるわけなので、既存の雑誌とは競合しないと考えています。


―― 一般の方からも、「絶版だと思われるのでJコミで扱ってほしい」という作品がアップロードされることを想定されているわけですよね?

赤松 可能なら作者さんに直接ご連絡し、扱っていいかを確認する場合もあると思います。あとは、まず低解像度で作品の一部を紹介し、作者さんからの連絡次第で全編を入れる。許諾されなければ掲載を取りやめる。そんな手もあります。


―― その部分はGoogleブックサーチの考え方と実はすごく似ているなと感じます。

赤松 そうですね、意識はしてます。でもGoogleに限らず、今の共有サイト全般に言えることではありますが、やっぱり明らかに違法なものも上がっているのは、作者からすれば、はっきり言って困りますよ。見て見ぬふりをしているようにも思えてしまう。彼らはクレームがあったらすぐ削除すれば罪に問われないわけですから。

 でも、僕たち(作家)が気づいて削除申請しても、それまでに見られたり、再生された被害額は誰も補償してくれないじゃないですか。Jコミは1クリック目から作者さんへの支払いがカウントされていくわけで、そこが大きな違いだと思っています。

Googleブックサーチ


―― たしかにGoogleの場合、一気にスキャンを進め、クレームが無ければ全編公開し続けるという姿勢で波紋を拡げましたが(今は著作者からの作品提供を受け、公開範囲や販売方法も柔軟に選べる「Googleエディション」も登場している)、Jコミの場合はあくまで読者や作者からの、いわば持ち込みが起点となるのが違いではありますね。出版社や、ほかの著者の方からの反応はいかがでしょうか?

赤松 絶版を対象にすることを強調していますので、出版社から苦情が来たとか、そういうことはまったくないですね。他の著者の方からの連絡については、ノーコメントで(笑)。しかしやはり、この1ヵ月のトライアルでクリック率などの成果が出ないと、わたしも責任をもってお声がけをすることはできないですね。


―― 絶版作品がJコミに取り上げられることによって、再び注目が集まり、再出版となった場合はどうなるのでしょうか?

赤松 その場合は作者さんから連絡を頂ければ、Jコミでの提供は終了となります。もちろんクリック保証を達成していれば、広告料を返還するといった必要もありません。出版されること自体は、我々にとっても、とても嬉しいことなんです。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン