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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第130回

NTTの「構造分離」よりも通信ビジネスの「構造改革」を

2010年11月24日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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また先送りされたNTT問題

 総務省の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」は22日に合同会合を開き、「光の道」実現に向けてという骨子案を示した。焦点となっていたNTTの組織形態については、ソフトバンクの提案していた構造分離をしりぞけ、NTT東西のインフラ部門と他部門の人事や会計などを分離する機能分離を提案した。

上記資料より抜粋。インフラ利用の同等性を確保するために必要な処置として3案が出され、このうち機能分離が提案された

 通信ビジネスを知らない人の中には、構造分離を構造改革と取り違える人がいるが、これはNTTのインフラを分離して現在の業界の構造を温存するもので、構造的な改革とはいえない。NTTの分割問題は、1985年に民営化されたときから続き、2006年に小泉内閣のもとでも構造分離が議論されたが、異論が噴出して「2010年に検討する」と問題が先送りされた。今回の決着は、それから4年ぶりだが、光ファイバーの規制を強化するマイナーチェンジで、実質的にはまた先送りされたという印象が強い。

 こういう細かい規制が続けられることが、NTTを「役所的」な会社にし、特にイノベーションが求められるNTTドコモなどの無線部門の活力をそいでいる。持株会社や各事業会社には合計100人近い「規制担当」がいて、日本の通信行政のほとんどは、実質的にはNTTが起案して、総務省が承認して決まる。NTTの「業務系」のエリートは役所との窓口に集められる。技術系のエリートが研究所に集められるのと同じで、規制のエキスパートにならないと事務系の社員は出世できないのだ。

 これはNTTとしては当然である。たとえば長距離回線の接続料が1円上がるだけで、年間では数百億円の増収になる。それに対して現場の営業マンがいくらがんばっても、年間の売り上げは一人あたり数億円がいいところだろう。つまり規制部門の一人あたり収益は、通信ビジネスよりもはるかに高いので、そこにエリートが集められるのだ。

 しかし、このように規制を有利にしてもらうことによってNTTが得られる利益は、他社の損失になるだけで、経済全体としては何も生産していない。このような非生産的なロビー活動をレント・シーキングと呼ぶ。規制の最大の弊害は、それによって通信業者がビジネスよりもレント・シーキングに努力するようになることだ。規制担当の社員も「いつまでこういう非生産的な仕事をするんだろう」と悩んでいる。

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