明白にはなったが正念場が続くNokia
NokiaがSymbianにこだわるのなら、Symbian Foundationを経由するよりも社内に持つほうがメリットは大きいだろう。開発の速度を加速し、端末のハードウェアとソフトウェアを密に統合した垂直型の開発が可能になる(AppleやResearch In Motionのモデル)。
Symbianは確かに劣勢だが、現在のスマートフォンがリーチしている市場は、携帯電話全体からみると20%にも満たないのだ(Gartnerが11月10日に発表した2010年第3四半期のデータでは19.3%)。スケールとグローバルを強みとするNokiaにとって、ミッドレンジとローエンドは重要だ。ここでは現在プラットフォームとして、「S40」が利用されているが、Symbianに塗り換わっていくことは十分考えられる。今後、Androidメーカーがバリエーションを増やし安価なAndroidを作る前に、守りを固める必要がある。
上述のGartnerによる第3四半期のレポートによると、Androidは前年の3.5%から25.5%と驚異的な成長を遂げており、一方Nokiaのシェアは3割を切った(28.2%)。4割に達したこともあるNokiaのシェアだが、30%台を下回ったのは2003年以来のことだ。当時Nokiaは折りたたみ型端末の投入が遅れて、シェアを減少させた。
今回のケースを端末のフォームファクターで見るとタッチ型になるが、単純にタッチ型端末を増やすだけでシェアが改善に向かうかというと疑問だ(前回のケースではNokiaは折りたたみ型端末をあまり増やすことなく、ブームの方が先に終わった)。今回は業界の構造が変化しているので簡単にはいかないかもしれない。
いずれにせよSymbian Foundation関連の発表により、CEO交代でプラットフォーム戦略がどうなるのか不透明だったNokiaのメッセージは明らかになった。それはつまりマス向けにSymbian、ハイエンドにはMeeGo、そしてSymbianとMeeGoの開発プラットフォームは「Qt」だ。だがMeeGo端末はまだ1台もない。年末商戦は「Symbian ^3」を搭載した「Nokia N8」など4機種で勝負することになる(前評判が高い「Nokia E7」も年内発売とのことだ)。NokiaはMeeGo端末のリリースを2011年4月ごろとしているが、MeeGoラインが軌道に乗るまで正念場が続きそうだ。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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