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山谷剛史の「中国IT小話」 第84回

中国の海賊版に日本のゲーム・アニメ・AVは泣き寝入り

2010年11月16日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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日本の海賊版コンテンツが氾濫する訳

 中国の海賊版コンテンツが減少する中、なぜ日本のコンテンツの海賊版は未だに氾濫し、問題が解決されないのか。「悪いことは最初からやらない」というお人好しの日本人とは異なり、「怒られて罰則が発生する“直前”までは何をやってでも儲けよう」とするのが中国人のビジネス感覚。中国のコンテンツホルダーが中国のコンテンツ配信者を訴えることで、中国国内の海賊版コンテンツは減少したが、逆に言えば中国企業でないと別の中国企業に対して法的処置を迅速に行なうことは難しい。

 どうもウォッチしていると、外国のコンテンツ企業が中国に支社を設けるよりも、中国の1企業とコンテンツ独占配信権を結んだほうが海賊版は氾濫しにくいようだ。これがすべてではないが、現場の日中の人々を比べるに、言葉や習慣の壁以外にも「新境地の中国でもビジネスを拡大してみよう」という日本企業と、「殺らなきゃ殺られる」という協力関係を結んだ中国企業のマインドの違いが影響していると思われる。

JETROによる今年上半期の日本のドラマ(左)、アニメおよび映画(右)コンテンツの中国進出状況調査(http://www.jetro.go.jp/industry/contents/reports/07000358)

同じくゲームの進出状況

同じくゲームの進出状況

 では中国に進出するなり、中国企業と提携するなりして取り締まればいいじゃないかとなるが、そこで中国の法が壁となる。一番わかりやすい例でいうと、中国ではポルノコンテンツが厳禁なので、アダルトビデオのコンテンツホルダーはそもそも中国に進出することも、中国企業とコンテンツ配信に関する契約を交わすこともできない。

 アダルトビデオコンテンツの海賊版の配信は「叱られて罰則が発生するまで海賊版を流し続ける」ことから、中国におけるポルノ開放がない限り未来永劫続くだろう。

OnePiece小説版は中国でも正規に出版できた

OnePiece小説版は中国でも正規に出版できた

 アニメやドラマなどの動画コンテンツに関しても、中国国内のコンテンツ新興の風潮の中、進出するのは簡単ではないようだ。国家広播電影電視総局が「中国の国情にあったコンテンツ」と認めない限り中国への進出は不可能であり、ひいては海賊版の取り締まりも極めて難しくなる。

 ゲームに関しても中国政府文化部らによる「44号文件」により、外国企業のゲーム機販売は禁止されている。出版に関しては、書籍のチェックは厳しくないが、マンガに関しては中国進出は難しい。そのため書籍はまだ中国の出版社と提携して海賊版を配信する文書共有サイトを叩けそうだが、漫画の取り締まりはかなり厳しい。

雑誌スタンドで販売される画集

雑誌スタンドで販売される画集

 中国政府が許可しないコンテンツは輸入できないはずだが、それでも日本でテレビアニメが放映されれば、タイムラグはほとんどなく中文化されたものがアップされ消されることはない。またサウンドノベルなどの日本語を多く含んだものも含め、あらゆるゲームが時間をかけて中文化される(筆者ブログ記事を参照)。

 漫画もしかりだ。いずれもアップされたものは、現実と物語の分別ができない人が大量発生した「デスノート」を除いて、消されることなくそのまま野放しとなる。逆に言えば、デスノートの件ではやる気になれば消せるが、ほぼすべてのコンテンツについて、当局は見て見ぬふりをしていると言えよう。

 中国は消費者に甘く、動画共有サイトでコンテンツが消されることもない一方、そのコンテンツホルダーの日本企業は中国の法に従がい進出できず、海賊版を駆逐しようにも駆逐できない。タイトル通り「中国の海賊版に日本のゲーム・アニメ・AVは泣き寝入り」なのである。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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