「作家から原稿をもらうだけでは、『プル型』の編集者だ」
そう語るのは、角川グループホールディングス取締役会長の角川歴彦氏。12日に東京・秋葉原で開催されたシンポジウム「電子書籍・コミックサミット in 秋葉原」で、基調講演のステージに立った。
グループ会社・角川コンテンツゲートは、電子書籍プラットフォーム「BOOK☆WALKER」配信タイトルの一部を公開。ライトノベル「涼宮ハルヒの憂鬱」、漫画「そらのおとしもの」など人気作を発表した。
文芸書としては、「新宿鮫」シリーズで知られる大沢在昌氏の書き下ろし小説「カルテット」を筆頭に、角川書店が擁する文芸誌「野性時代」を、「デジタル野性時代」として配信する予定もあるという。カルテットは、近く映像化の予定もある大物コンテンツだ。
角川氏は、BOOK☆WALKERに角川グループのコンテンツを結集させていくという決意を述べた上で、「iPadへの挑戦――編集者の力」と題し、電子書籍時代に求められる出版の姿について話した。
出版社はソーシャル化する
初めにスライドに映し出されたのは、電子書籍の売上推移だ。いわゆる「紙市場」が右肩下がりな中、電子書籍はケータイ小説・漫画を中心に、堅調な推移を見せている。
「2005年には94億円だった市場は、2009年に574億円の規模に成長した。2014年には、約1300億円市場に成長するという予想が立っている。その中で、『出版社はネット化する』『出版社はソーシャル化する』という2つの流れがある」
その上で話したのは、1980年代に端を発する「知識社会」の時代。戦後の日本はモノを作る工場として、知財(ノウハウ)をもとに成長してきた。それが、「知的創造」の時代を生み、知識を中心とした社会に移ったのだという。
だが、2010年現在、その時代さえもう終わりつつある。
「尖閣諸島のビデオ流出、小沢一郎氏のニコニコ動画出演。インターネットを中心に、こうした形で『情報社会』ができつつある。知識から情報。ウィキペディアのように、みんなで事業を立ち上げていくような形態を発展させたような社会ができている」